(2)迅速性

 労働審判は、通常の民事裁判では望めない迅速性を実現するために生まれた面があります。民事裁判の場合、上級審まで進むと何年もかかる場合があります。普通の会社員が仕事をしながら長い裁判にかかわり続けなければならないのは、かなりの負担です。

 労働審判は、原則として3回以内の審理で終結しなければならないことになっています。3回でどのくらいの期間がかかるかというと、平均して2カ月半で審理を終えているのが実情ですから、おおむね3カ月で終わると考えておけばいいでしょう。

 なお、3回の審理で和解に至らず、さらに労働者側か使用者側のどちらかが審判官によって下された審判の内容に納得せず、異議を申し立てた場合は、通常の民事訴訟に移行します。

(3)柔軟性

 通常の民事裁判であれば、法律に基づいて厳格に権利関係の主張や立証を行っていかなければなりませんが、労働審判は法律を踏まえつつも当事者間の実情に即した迅速な解決を図ることに主眼が置かれています。そのため、裁判の判決にあたる「審判」に至る前に、できるだけ和解の成立をめざした調停の努力をします。実際に申立件数の8割は、調停による和解によって解決を見出しています。

2006年にスタートした労働審判制度
申立件数は急増中!

 労働審判は2006年4月にスタートした制度ですが、スタート後は申立件数が年々急増しています。最高裁行政局の調べでは、2006年が877件、2007年は倍に近い1494件に増え、2009年には3468件になりました。

 2010年はほぼ横ばいの3375件でしたが、長い目で見ると今後も増加することが予想されます。

 5年間の申立て内容を分類すると、解雇問題などの地位確認が48.8%で最も多く、続いて未払い残業代など賃金に関することが30.9%、この2分野で8割を占めています。

 サービス残業に対する問題意識が高まっていることを考えると、未払い残業代で労働審判に申し立てるケースが今後もさらに増えるのではないでしょうか。