長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第41回】 2017年9月14日 樋口直哉 [小説家・料理人]

白寿まで生き抜いた野上弥生子、抹茶とお菓子が朝ご飯代わり

〈私は朝ご飯はいただきません。その代りにお抹茶を大服で二杯がぶがぶ飲んで、お菓子をたくさん食べて、それでお仕舞い。お昼は牛乳を二合に有り合わせの果物を食べるくらい(中略)ただ晩だけはご飯を食べるから、どこかでお招(よ)ばれすると、恥ずかしいみたいにたくさん食べますよ〉

 抹茶は茶葉に含まれる栄養を余すことなく摂取できる優れた食品で、最近は海外でも注目されている。また、含まれるカフェインが体にいいか悪いかについては賛否両論あるものの、常識的な量を摂取する限りにおいては問題ないと考えられている。昼の牛乳はお茶に含まれていないカルシウムを補い、果物はもちろんビタミン類などが豊富なので、夕食に十分なタンパク質と炭水化物を摂取できれば、1日トータルでは栄養バランスの優れた食生活を送れるはずだ。その証拠に彼女は晩年になるまで、病気らしい病気をしたことがなかったそうである。

 人間はいつまで仕事ができるのか。弥生子の人生が教えてくれる答えは「死ぬまで」である。未完に終わった小説『森』は明治女学校での日々のことを描いた自伝的小説だった。彼女は最後に始まりの場所に戻っていったのだ。まるで大きな円を描くように。

参考文献/『野上弥生子全集 別巻二』 野上弥生子

(小説家・料理人 樋口直哉)

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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