営業は「結果」、
しかし「結果」からは何も見えてこない

「うちの会社は、どうも営業力が弱いんですよ。だから営業力強化は喫緊の課題です」

 多くの市場が、ライフサイクルでいうところの“成熟期”あるいは“衰退期”にさしかかっている昨今、この“営業力”を課題として捉える企業が増えてきたように思います。ところが一方で、突っ込んだ(「営業力が弱い」とはどういうことだろうと)質問を重ねていくうちに、なかなか実態を把握しきれていないケースがほとんどだということに直面します。

 要するに、いわゆる“見える化”ができていないのです。しかしながら、これはある意味、致し方ない部分があります。長い間(というか現在も)、営業という部門は、基本的に売上目標を達成することだけ求められており、結果さえ出せば細かいところまで気にする必要がない、というのが実態だったからです。

 つまり、「営業力が弱い」という話の前提は、「(思ったほど)売れていない」という“結果”に対するイメージでしかなく、だからこそ追求してみたところで、明確な原因に辿り着きません。

 これは以前、サッカー日本代表の課題のなかで取り上げた「決定力が弱い」という話と同じ構造になっているような気がします。

“決定力不足”の日本代表はなぜ予選突破できたか
真の戦略的課題には明確な優先順位がある

 昨年のサッカーワールドカップ南アフリカ大会直前、調子の出ない日本代表に対して、マスコミの多くは「決定力不足が課題」だと報じていたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。

 この報道を見ながら、以前、「サッカー日本代表に学ぶ「強い組織づくり」の極意」という記事の中で、主に2つの論点を取り上げました。

 ひとつは、“市場”の視点で、アジア予選と本大会では日本のポジショニングも大きく異なる(アジアにおける日本は強豪国だが世界における日本は弱小国)のは明らかであり、アジア予選でも度々取り上げられていた「守備的な対戦相手を崩し切れない=決定力不足」という課題をそのまま本大会に持ち込むのは危険なのではないかということ。

 もうひとつは“時間軸”の視点で、「決定力を向上しなければならない」と挙げるのはいいのですが、果たしてあの短期間(1~2ヵ月)に解決するのが可能なのかという疑問です。つまり、中期的な課題として取り組むべきこととしては間違いないと思うのですが、本大会までの短期間に改善できる可能性が高いのは「対戦相手に得点を与えないこと」ではないか、という話です。