経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2017
2017年9月26日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

知識創造には「トップダウン」でも「ボトムアップ」でも不十分

【野中郁次郎氏×武田隆氏対談3】

組織の経営スタイルとしてよく言われるのが「トップダウン」と「ボトムアップ」だ。トップダウンは強い推進力を持ったリーダーが意思決定を行うため、スピード感や組織の一体感という点では一日の長があるものの、リーダーの指示がなければ組織が動かないというデメリットがある。一方のボトムアップには、現場に裁量が委ねられるためモチベーションは維持しやすい半面、組織としての足並みが揃わないと方向性を見失ってしまう恐れがある。では、これらの不足を解消する方法はあるのだろうか。一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏は、そのカギを握るのは「ミドル」だと喝破する。果たしてその真意とは?

経営はアートであり、科学である

武田 野中先生が示されたナレッジマネジメントの基礎理論となるSECIモデル(第1回の記事を参照)では、「暗黙知」と「形式知」の交換と知識移転のプロセスがモデル化されています。

野中郁次郎(のなか・いくじろう)
1935年(昭和10年)、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』(千倉書房、1974年。増補新装版、2014年)、『失敗の本質』(共著、ダイヤモンド社、1984年。中公文庫、1991年)、『知識創造の経営』(日本経済新聞社、1990年)、『アメリカ海兵隊』(中公新書、1995年)、『知識創造経営のプリンシプル』(共著、東洋経済新報社、2012年)、『戦略論の名著』(編著、中公新書、2013年)、『実践 ソーシャルイノベーション』(共著、千倉書房、2014年)、『全員経営』(共著、日本経済新聞社、2015年)、『知的機動力の本質』(中央公論社、2017年)、『日本の企業家 7 本田宗一郎 夢を追い続けた知的バーバリアン』(PHP経営叢書、2017年)などがある

 その暗黙知はアート、そして形式知はサイエンス、と理解してよいのでしょうか。そしてその2つがはっきり分かれているわけではなく、グラデーションになっていると。

野中 そう、“Art or Science”ではなく、“Art and Science”なんですよね。いま、米国のビジネススクールでは“Management as a Science”と教えていますが、それは少し違っていて、やはりそこも“Art and Science”だと思っています。

 僕だけでなく、友人で経営学者のヘンリー・ミンツバーグも「マネジメントというのは、クラフト、アート、そしてサイエンスのブレンドだ」と言っていました。それはとても共感できますし、なかなかいい表現だと思います。そのブレンドの度合いは、そのときどきのリーダーがコンテクストに応じてジャッジしているんです。

武田 組織のリーダーが、マネジメントにおいてどういう配分にするかを、現場に合わせて考えているんですね。

野中 SECIモデルを回すのもリーダーの役割で、そのリーダーのコンセプトは「フロネシス」だと考えているんですよ。

武田 フロネシスとは?

野中 アリストテレスが分類した3つの知のうちのひとつ、英語訳では賢慮(prudence)や実践的知恵(practical wisdom)とも言われますが、要は「実践的賢慮」、端的には「実践知」です。

 フロネシスというのは、中庸を守る徳性です。科学的知識、実践的知識のどちらか一方に偏るのではなく、状況に応じてダイナミックに融合させて判断することができる。そして、それをもとに賢く行動できるリーダーが、知識創造には必要だと考えられます。

武田 SECIモデルを回すのには、これまでのリーダーシップとは違う、新しいリーダーの解釈が必要なんですね。



武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役 兼 最高経営責任者]

日本大学芸術学部在学中の1996年、前身となるエイベック研究所を創業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発し、複数の特許を取得。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。これまでに森永乳業、ライオン、資生堂ジャパンをはじめ、300社超のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア(矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリンと大阪に支局を開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、ロングセラーに。また、CSR活動の一環としてJFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」のパーソナリティも務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


ソーシャルメディア進化論2017

花王、ベネッセ、カゴメ、レナウン、ユーキャンはじめ約300社の支援実績を誇るソーシャルメディア・マーケティングの第一人者、クオンの代表取締役 武田隆氏が、ダイナミックに進化し続けるソーシャルメディアの現在と未来に独自の視点から迫る!

「ソーシャルメディア進化論2017」

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