株式会社アインファーマシーズ(北海道札幌市、大谷喜一社長、〈以下、アイン〉)が、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(東京都千代田区、山田隆持社長、〈以下、ドコモ〉)と提携し、調剤情報を患者のスマートフォンに提供する取り組みを実験的に始めた。

 アイン薬局エキュート立川店で2011年7月15日から10月14日まで、トライアル実施を行う。これにより、手法の有効性の確認、今後の課題と患者からのニーズの掘り起こしを行い、本格的実用化を検討する。

 本トライアルでは、小児科を利用する子どもがいる保護者を中心にリクルートを行い、80人を限度に端末を貸し出して取り組みに参加してもらう。子どもの薬に対しては保護者の関心が高く、世代的にスマートフォンの操作に戸惑いがないことから、対象者の属性は決められた。協力依頼を受けた人の反応もよく、7月30日には最大人数の80人の参加者が集まった。利用する端末はシャープ製スマートフォン「SH-12C (AQUOS PHONE)」。専用アプリをインストールし、インターネット接続のみが可能となった状態で貸し出す。

 薬局で発行される調剤報酬明細書にあるQRコード、またはFelicaを利用してスマートフォンに調剤情報を取り込む。「おくすり手帳」に記載の内容をすべて取り込め、体調などを書き込むことも可能だ。患者は、主に端末内に保管された情報を閲覧して利用する。個人情報保護の観点から、個人を特定できる情報はサーバに保有しない。

 調剤情報のほか、一般の生活関連情報や薬の保存方法などの注意事項も薬局から配信する。貸し出した端末あてにアンケートを送付して、使い勝手や患者の要望を聞き取り、実用化に向けて追加が必要な機能や改善点を探る予定だ。アイン広報では、この取り組みについて「患者さんの利便性を図ることはもちろん、現在は薬局内での服薬指導中心になっている患者さんとのコミュニケーションを、次の来局までにも増やしたい」と話す。患者も薬局も忙しいなか、薬局外にコミュニケーションの場を設けられることは、薬の適正使用にもつながり、両者にとってメリットが大きい。

 アインでは、患者とのコミュニケーションの手段を増やしてサービスを向上させることを重視し、その方法を模索していた。そこにドコモがトライアル計画を提案、お互いの考えが一致したという。ドコモの担当部署である「フロンティアサービス部」は、ソーシャルサポート事業(金融、ヘルスケア、環境・エコロジー、セキュリティ、教育)を推進する部署で、医療分野では、医師をはじめとする医療従事者向けに、スマートフォン等を使った情報支援サービスなどを提供してきた。一般の患者に向けた医療サポート事業はこれが初めてとなり、今後同社では、一般患者へのビジネス充実も検討している。

 国民一人ひとりの医療情報の記録、データ化、集積は国全体でも大きな課題となっている。調剤情報の扱い、その情報管理を介した患者とのコミュニケーションについては、調剤事業を行う企業にとって今後、優先的に考察が必要な事柄だろう。どのようなかたちでの情報管理が適切なのか、どんなコミュニケーション方法が可能になるのか、今後の情勢を決めるうえでも注目の取り組みだ。また、データ管理やユビキタス対応など、大きな事業を進めるうえでは、ジャンルをまたいだ企業との提携が必須となる。広い視野を持った事業運営も今後は、より重視されるだろう。

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