[東京 19日 ロイター] - 10月の衆院解散観測が高まってきたことに対し、東京市場はいったん株高で反応している。選挙期間は株高になることが多い「実績」を踏まえ、買い戻しが入っているためだ。しかし、消費増税も絡み、勝負の鍵を握るとみられる主婦層の動きは読みにくい。両にらみで臨む海外勢もいるとされ、明日以降も株高が続くとは限らないようだ。

<ショートのアンワインド>

日本が連休中の米ダウ<.DJI>は15、18日の2日間で計0.57%の上昇。これに対し、19日の日経平均<.N225>は1日で1.96%の上昇だ。他のアジア株と比べても日本株の上昇率は突出しており、海外要因だけでなく、日本の解散観測が買い材料になったことは否めない。

大和証券調べによると、1969年12月以降、衆院解散から総選挙までの日経平均の騰落率は15回の平均で3.59%の上昇。2003年10月のケースを除いてすべてプラスだ。こうした過去の例を踏まえ、北朝鮮リスクなどを警戒したショートポジションが巻き戻されたとみられている。

野党の「受け皿」がそろわない中であれば、自民党・公明両党の連立与党が勝利する可能性は高い。長期政権による政策安定化や、金融緩和などアベノミクス政策の継続への期待もある。解散の大義は見えにくいが、市場では「政策継続を織り込んで、解散観測はいったん株高材料になる」(外資系証券)との見方が広がっている。

現在の衆議院における自民・公明両党の議席数は321(自民党286、公明党35)。今回の選挙では区割り変更と同時に定員が10議席減少するため、票読みは難しいが、現在の定数475を前提にすれば、憲法改正の発議に必要な3分の2を維持するには7議席減らしても可能な計算だ。

<20議席減なら責任論か>

しかし、選挙には不透明感もある。北朝鮮リスクの高まりなどを背景に安倍晋三内閣の支持率は回復しているものの、森友・加計学園問題で負った「ダメージ」が残っているとみられているためだ。

「安倍離れが進んでいる主婦層の行動が予想しにくい。20議席以上失うことになれば、与党内から責任論が浮上する可能性がある」とBNPパリバ証券・グローバルマーケット統括本部長、岡澤恭弥氏は指摘する。

株式オプション市場では、行使価格と満期日が同じプットとコールの両方を買うストラドルポジションを取る海外投資家もいるという。株高・株安どちらの方向にでも大きく動けば、利益を上げることができる両にらみの戦略だ。

子育て支援や教育無償化などの政策は、主婦層への「受け」がいいとみられる。だが、その財源として2019年10月の10%への消費増税を掲げて戦うとすれば、選挙の帰すうは微妙になる。「もし自民党が負ければ、ドルは100円割れ、日経平均は1万8000円を割り込む可能性がある」(岡澤氏)という。

<高まりにくい政策期待>

野党第一党である民進党の前原誠司代表は、消費増税を掲げており、選挙の争点になりにくい。小池百合子東京都知事の側近である若狭勝衆院議員が近日中に立ち上げる新党が増税反対を打ち出したとしても、来月前半とみられる公示日までに陣容を整え、大量の候補者をゼロから全国規模で擁立するのは現実的に難しい。

とはいえ、金融市場でも消費増税延期の見方は少なからずあったため、スケジュール通りの増税となれば悪影響が出る可能性もある。「増税延期を想定していたが、総選挙の前倒しとなればシナリオを見直す必要が出てくる。海外勢もまだそこは織り込んでいないだろう」(メリルリンチ日本証券の主席エコノミスト、デバリエいづみ氏)という。

また、選挙事情に詳しい一部の関係者によると、先の都議選で自民党が大敗し衆院選の「手足」になる都議が激減。東京都内に限っては、自民党が苦戦するとの見方もある。

消費増税のネガティブ・インパクトを消すために、大規模な財政政策を打ち出したとしても、アクセルとブレーキを同時にかけるようなもので、市場にプラスと受け止められるかは微妙だ。「自民党が勝利したからといって、アベノミクス政策に再び期待感が高まるとは考えにくい」とニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏はみる。

歳出増と金融緩和を組み合わせた政策ミックスをより大胆に行えば、日本株もポジティブに反応しそうだ。しかし、それは「財政ファイナンス」的な色彩が一層強まることにもなる。

みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「債券や株式は日銀の影響力が大きくなっており、政権の枠組みが変わらない限り、大きく売られることはなく、下値が堅いとみれば買いも入りやすい」と話す。ただ、「官製相場」による歪みは、さらに増大すると指摘。将来の禍根になると強く警鐘を鳴らしている。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

*本文中のBNPパリバ証券の岡澤氏の役職名を修正して再送します