[ベルリン 14日 ロイター] - 24日のドイツ連邦議会選挙はメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の勝利がほぼ確実視されているが、重要なのはどの政党と連立を組むか、また連立工作にどの程度の時間を要するかだ。

今回は極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が初めて議席を確保する見通し。ただ、他のすべての政党がAfDとの連立を排除しており、CDUは引き続き社会民主党(SPD)と「大連立」を組む可能性が最も高そうだ。

首相は選挙後すぐに各党に打診を初めそうだが、交渉が長引いて数カ月にわたり政策がマヒする恐れもある。

今回は議会内の党派数が4から6に増える可能性があるため、連立交渉はなおさら複雑になる。

新たな連立政権は、過去2年間で100万人を超えた移民の融合や欧州連合(EU)改革、ロシアやトルコとの関係といった重要課題に取り組むことになる。

主な連立シナリオは以下の通り。

●CDUとSPDの大連立

最も可能性の高いシナリオだ。メルケル政権12年のうち、CDUとその姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)は過去4年間を含む8年間にわたってSPDと連立を組んできた。

─実現のシナリオ 

メルケル氏はSPDとの連立に居心地の良さを感じているようだ。安定多数を抑えられ、政策の継続性もあり、欧州、トルコ、外交、移民、安全保障を巡って概ね見解が一致している。

─障害

大連立は両方にとって最終手段。特にSPDは格下の連立相手という地位に甘んじることを恐れている。SPDは投資、教育、格差、公正な年金といった問題を重視しているのに対し、CDU・CSUの軸足は減税にある。

●CDUと自由民主党が連立

保守のCDUとビジネス寄りの自由民主党(FDP)は伝統的に協力関係にあり、特に財政や経済政策の連携相手。戦後70年間のほぼ半分は連立を組んでおり、十分な議席を確保できればこの組み合わせの可能性が最も高くなる。

─実現のシナリオ

FDPの支持率は今年回復しており、5月のノルトライン・ウェストファーレン州議会選では十分な議席を獲得してCDUと連立を組んだ。

─障害

FDPが前回、CDUと連立を組んだ4年間は混乱続きとなり、2013年の連邦議会選挙では議席をすべて失った。FDPの減税、民営化案はCDUより過激で、EUの統合深化に反対し、EU加盟諸国のユーロ離脱を認めるべきとの立場だ。

●CDU、FDP、緑の党の連立

連邦政府レベルでの連立実績はないが、北部シュレスウィヒ・ホルシュタイン州では連立を組んでいる。

─実現のシナリオ

メルケル氏がFDPもしくは緑の党だけとの連立では政権を樹立できない場合、3党連立を模索するかもしれない。FDPと緑の党はこの選択肢を否定しているが、政権入りの魅力に引かれる可能性がある。

─障害

緑の党とFDPの政治的主張は対極にある。税制、エネルギー、EU、移民などの問題で衝突しそうだ。

●CDUと緑の党の連立

連邦政府レベルでの連立実績はないが、再生可能エネルギーを推進してきたメルケル氏は、緑の党との連立を選択肢に挙げたことがある。CDUと緑の党は、地方レベルでは協力してきた。

─実現のシナリオ

緑の党の指導部は、「環境の戦士」だった創設者とは異なり、現実主義者らだ。政権入りが視野に入れば妥協するかもしれない。この組み合わせになればEU強化を支持し、気候変動対策に力を入れるだろう。緑の党は石炭火力発電所の段階的廃止も進めそうだ。

─障害

両党で議席過半数を確保できるかは疑問。政策を巡る意見の相違も多く、CDUは減税を、緑の党は超富裕層への課税強化を求めている。緑の党は移民政策について、よりリベラル寄りで、軍事費拡大には反対。エネルギー、自動車の排気規制などの問題でも両党は対立しそうだ。

●少数派議会/再選挙/マヒ

与党の議席が過半に達しない少数派議会となれば、安定志向のドイツ国民は再選挙を求めるかもしれない。

─実現のシナリオ

メルケル氏は連立相手を確保できなくても、自身の人気は高いので政権を担う使命があると感じるかもしれない。個別の政策でFDPやSPD、緑の党の閣外協力を仰ぐ可能性がある。

─障害

メルケル氏も国民も不安定さを警戒するだろう。ヒトラーのナチ党台頭に至る数年間は、安定多数を獲得する政党を欠く不安定な状態だった。

●SPD、左派党、緑の党の連立

SPDが首相の座を獲得するには、緑の党および急進的な左派党と組むしかないが、実現の確率は非常に低い。

─実現のシナリオ

SPDはこれまでで初めて、左派党との連立の可能性を排除していない。連立が実現すれば、投資拡大と格差対策に力を入れ、現在よりも親ロシア路線を採りそうだ。

─障害

左派党は旧東ドイツの共産党と関係がある。またSPDは10年余り前、大胆な労働市場改革を巡り、左派党への大量移籍を招いた苦い記憶がある。SPDが緑の党と組むのは容易だが、左派党は最高税率75%、週労働時間30時間といった政策を提唱している。