2008年7月5日、東京情報大学情報ビジネス学科主催による公開講座が開かれた。テーマは、行政不況。日本経済低迷の原因は、“3K”と呼ばれる建築基準法、貸金業法、金融商品取引法が引き起こしているのではないか、つまり、政策が失敗したのではないか、というものだ。このテーマについて気鋭の論客たちが徹底討論した。その模様を2回にわたりお伝えする。(構成/『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)

パネリスト:
石川和男
(東京財団研究員)
大槻奈那(UBS証券株式調査部シニアアナリスト)
中森貴和(帝国データバンク情報部情報取材課長)
川村晃司(テレビ朝日コメンテーター)
司会:堂下浩(東京情報大学准教授)

堂下 日本の株式市場が欧米以上に低迷しているのは、サブプライム問題以外に何か原因があるのではないかという観点から、まず大槻さんにお話をうかがいます。

大槻奈那
大槻奈那(UBS証券株式調査部シニアアナリスト)

大槻 もう2年以上も前から、私たちはこれほどの資金余りの状況はいつか崩壊すると言い続けてきました。それでも市場はどうにか回ってきましたが、いまこのような状況となってきたことは、ある意味で予測された事態だといえます。しかしあまりにもタイミングが悪すぎました。

 サブプライム問題は確かに引き金とはなりましたが、日本ではそれと同時にさまざまな法改正が行われ、市場の悪化に拍車をかけています。たとえば、もし建築基準法の改正がもっと早い段階で着手されていたら、サブプライムの影響を受ける前に何とか調整できていたかもしれません。その意味では、政策的な面でもっと柔軟な対応ができなかったのかと思われてなりません。

デメリットが大きかった
3K法改正

中森貴和
中森貴和(帝国データバンク情報部情報取材課長)

堂下 政策の失敗という観点では、実際にいま中小零細企業の倒産が増えているわけですが。

中森 まずマクロの観点では、景気は必ず上下するものですが、現在についていえば確実に下降線に入りつつあります。またミクロ、すなわち企業活動の観点では、特に中小零細企業の状況はバブル崩壊以降ほとんど良くなっていない。どうにかここまで保ってきたところへ、日本経済の抱えるさまざまな脆弱さが露呈し、そこにサブプライム問題や一連の法改正が追い打ち的に作用したものと考えることができます。