旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理
【第6回】 2011年10月7日 車 浮代

焼いて食べるだけでは芸がない
豊かな江戸の「松茸料理」を味わいつくそう

 国産松茸はと言えば、もはや“高根の花”。

 安い輸入物が大量に入ってきて、値を下げるかと思いきや、逆に国産品との違いが顕著になり、益々高値を呼んだように思います。

 けれどこの松茸、一昔前は椎茸より安価だったということをご存知でしょうか?

 私が子供の頃でさえ、両親から、「肉を買うお金がないから松茸のすき焼きを食べていた」という話を聞き、羨ましく思った記憶があります。

 実はこの話を聞いた時、我が家の食卓では『はりはり鍋』(鯨肉と水菜だけのすきやき)がぐつぐつと煮えていたのですが、当時鯨肉が好きではなかった私は、水菜ばかりをつつきながら、「絶対松茸の方がいいのに…」としょぼくれたものです。

 今や鯨も松茸も、牛肉を遥かにしのぐ高級食材。

 松茸の食べ方といえば、やはり『焼き松茸』が王道で、すきやきで食べるのはもったいないと思われがちですが、牛肉ではなく鴨の肉を使えば、鴨の上品な脂が松茸の香りを閉じ込め、松茸の香りが鴨に移り、相乗効果でえも言われぬ美味しさが生まれます。

 残った出汁は捨ててしまわず、そうめんを入れてにゅうめんにしたり、かけ蕎麦のつゆとしてお使いください。

松茸鴨鍋
【材料】松茸…2本/鴨肉…6切れ/長葱…2本/芹、または春菊…1束/焼き豆腐…半丁/だし…200ml(1カップ)/酒…大さじ3/みりん…大さじ3/醤油…大さじ3
【作り方】①松茸は汚れを取って石づきを薄く削ぎ、手で4つに裂く。長葱は4cm幅の斜め切り、芹は5cm幅のざく切り、焼き豆腐は6等分する。②小鍋に全ての材料と調味料を入れて煮る。

 日本人の松茸好きは近年に始まったことではありません。

 すでに弥生時代には食べられていた痕跡があるそうで、平安貴族たちは、秋になると松茸狩りを楽しみ、和歌にも多く詠まれています。

「香り松茸、味しめじ」と言い伝えられているように、松茸は香りが命です。

 ご承知のように、香りというものは、時間とともに抜けていくものなので、採ったその場で焼いて食べるのが最高の贅沢というわけです。

 輸入物の松茸が、どうしても国産品に追いつけないのは、運ばれてくる時間に問題があります。

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旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理

栄養価の高い旬の食材を、あまり手を加えずにいただく――。これが江戸料理の醍醐味であり、健康長寿につながる正しい食のあり方だと思います。このコラムでは、江戸料理と健康をテーマに、食材ごとの情報とレシピをご紹介していきます。

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