TV出演に講演…「社員のタレント化」は会社にとって得か損か

講演会で実績を誇る事業部長
「出る杭は打たれる」は過去

 ビジネスカンファレンスの様子が変わった。識者や社長ばかりでなく、一般企業の管理職がどんどん登壇するようになった。華やかなプレゼンテーションで商売を盛り上げようとするベンダー企業のみならず、ユーザー側の企業の事業部長クラスも「新規事業成功の3つの法則」「リーダーを輩出するわが社の人事政策」など勇ましいタイトルで講演を行っている。

 有名になり、タレント化する人もいる。「ビジネスパーソンは黙って仕事」というのが美風でさえあった時代を知る者には隔世の観がある。

 かつては違った。1980年代後半、私が学生向けの就職情報誌を作るビジネスに関わっていたとき、企業の一般社員に写真付きで雑誌にインタビューを掲載させてほしいと言うと、「そんなおこがましいことは…」、「たまたま私がいま課長の職にあるだけで……」と及び腰も普通だった。みんな「出る杭」になって脚を引っ張られぬよう、目立たないようにしていたのだ。多くの会社も個人だけに焦点が当たるようなPRの仕方は嫌がるふしがあった。今は違う。個人も会社も喜んで取材を受けてくれる。

 もちろん社風もあるだろう。最近の雑誌で、1社をクローズアップした特集を見かけるが、誌面に出ている社員のコメントがソツなく優等生的な会社、大言壮語して夢を語る会社、先輩や上司の素晴らしさを枕詞に入れることがデフォルトになっている会社、全部自分がやったかのように話す会社と、まあいろいろある。

 今回は「個人が目立つこと」が「会社の損得」にどう影響するのか考えてみたい。先に言っておくと、これがおよそポジティブな要素しか見当たらないのだ。