戸建住宅で培った
きめ細やかな対応力

 マンション建替え研究所の大木祐悟主任研究員は語る。

「マンションに住む方は年齢も経済状況も考え方もバラバラです。100戸のマンションの建替えは、100世帯の個人住宅の建替えと同じなのです。当社では担当者全員がヘーベルハウスの営業経験があり、そこで培ったフェイス・トゥ・フェイスの姿勢で、お住まいの方々の悩みや問題を一つひとつ丁寧に解きほぐしています」

 同社では合意形成に向けて、全体説明会やテーマごとのワークショップのほか、数回にわたる個別面談を実施し、可能な限り全世帯と直接会う機会をつくり、要望や意見を集約していく。最初の個別面談ではあまり話をしてくれない区分所有者も、2回目、3回目と面談を重ねていくなかで次第に打ち解けていくという。担当者の折衝力や人間力が問われる地道で泥臭い作業だ。

 たとえば間取りに関しては、高齢者から子育て世代まで、求めるものは千差万別だ。旭化成不動産レジデンスでは、各世帯の要望に極力沿うようにプランを作成する。その結果、一つのマンションで、30平方メートル台の単身向けから100平方メートル近いファミリータイプまで60パターン近い間取りを作ることもある。

 建替え期間中のサポートにも力を入れる。引っ越しや仮住まい先の手配、売却・賃貸の相談、粗大ゴミの処分までさまざまなニーズや不安に対応。特に不安を感じやすい高齢者には、より細やかに対応するために専属の担当者を付ける。

 再建マンションのコミュニティづくりへの配慮も欠かさない。共用施設の提案はもちろん、旭化成不動産レジデンスの担当者がイベントの開催をサポートし、コミュニティ再生をバックアップすることもある。

旭化成不動産レジデンスの携わった事例について、課題や合意形成に向けた活動をまとめた「10の実例に学ぶマンション建替えレポート」(右)、建替えに関する基本的な知識を学べる「マンション建替え入門」(左)など を、本誌資料請求ハガキのほか、ホームページや電話での申し込みで無料提供している

「長期にわたってお住まいの方々をサポートすることで、信頼関係を構築できます。その結果、建替え時の担当者あてに、数年後に売却や相続のご相談をいただくケースもあります」と大木氏。同社が標榜する「ロングライフ住宅の実現」に向けた、長期間にわたるコミュニケーションが実を結んだ例といえる。

 最後に向田所長は、今後のマンション建替えの動向についてこう語った。

「経済環境の変化もあり、かつてのように権利者の費用負担が少なくてすむマンションの建替えは少なくなっています。今後も高齢化などさまざまな問題を抱えた事例が増えていくでしょう。そうした問題をクリアするためには、初動期からの管理組合や区分所有者が主体となった合意形成活動が大切。当社はそれを全面的にサポートしていきます」