B&O

 テクノロジーではなく人を優先する。当たり前のようで難しいことの実現。

 優れたデザインと特徴ある機能が印象深い、デンマークのAVブランドBang & Olufsen(B&O)の企業理念は「Bang & Olufsen exists to move you with enduring magical experience」(バング&オルフセンは体験を通じて人々の心を動かすために存在する)だ。

 日本でも最近、「モノよりコト」と言った言葉をよく聞くが、B&Oではブランドが発祥した90年以上前からその思想が受け継がれているというから驚く。

 エピソードがある。1926年(昭和2年)に投入した「Eliminator」の話だ。ラジオに付ける電源で、今で言うACアダプターである。当時のラジオは蓄電池で駆動するのが普通で、家族団らんのただなかに、電池が切れてしまうことも多々あった。この残念な体験を何とかできないかと考えて作られた製品だ。

 「電気は危ないものというイメージ」を払しょくし、その便利さで人々の暮らしを豊かにしたのがEliminatorだ。ブランドの原点というべき製品である。

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Eliminator

 B&Oは1950年、テレビの製品化に成功した。その技術を進化させ、1962年にはキャスターと取っ手が付いて移動できる、世界初のポータブルテレビ「Beovision Horisont」を開発した。日本のテレビは同時期、居間に鎮座していた。テレビは部屋の中心であり、人や物の位置はテレビの都合で決められた。B&Oが追求したのは、製品が人の生活に歩み寄るスタイルだ。

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1950年に開発したテレビ
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Beovision Horisont

 人の体験を豊かにする。B&Oの特徴である美しいデザインも、それを体現するファクターなのだろう。

 そんなB&Oの現在を象徴する製品がこの秋登場する。

 海外では9月のIFAに合わせて発表された製品だ。ひとつは「BeoLab 50」というアクティブスピーカー。もうひとつは「BeoVision Eclipse」という4K対応の有機ELテレビだ。

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BeoLab 50

部屋やリスニングスタイルにスピーカーが寄り添う

 BeoLab 50はピカピカに磨き上げたアルミの筐体に、オーク材のサイドパネル、ブラックファブリックのフロントカバーをあしらったフロア型スピーカーだ。世界中のセレブが居室に置いても違和感のない、見るからにゴージャスな存在感を醸し出している。

B&O

 内部も手の込んだもので、B&Oの持つ最新技術がふんだんに用いられている。しかし本質はそこではないだろう。冒頭でも述べた体験の素晴らしさだ。見た目や音も、もちろんいいが、ハイエンドオーディオにありがちな仰々しさや、難しさを極力排除し、リビングに置くオーディオのあるべき姿を真剣に考えている点に注目したい。

 ハイエンドオーディオはスペックで語られることが多く、かつ顧客の関心も機器そのもののできに向かいがちだ。しかし、いい音を出すうえで最も重要になるのはそれを鳴らす空間である。メーカーのデモは普通、しっかりと防音・調音された部屋で、スピーカーの置き方やリスニングの距離が厳密にセッティングした状態で実施される。しかしすべてのユーザーが専用のリスニングルームを持つわけではない。

 ユーザーがスピーカーを置くリビングは、生活の場である。音楽を聴くだけでなく、家族や友人と一緒に時間を過ごし、コミュニケーションを取るための場所なのだ。スピーカーのためにライフスタイルを犠牲にすることはできない。

 そこでB&Oが開発したのが「Active Room Compensation」と「Beam width control」という2つの技術だ。スピーカーを設置している場所とリスナーの距離を加味し、壁や家具に音が反射の悪影響を排除。さらに誰がどのように聴くかも想定して、高精度な再生を可能とする技術である。

B&O
B&O

 BeoLab 50は上部に3/4インチのツィーター、正面向いた4インチ×3基のミッドレンジ、10インチのウーファーを備えている。さらに左右の斜め後ろに高さを変えたウーファーを2基備えている。音は一般的に低音が広がり(指向性が低い)、高音になるにつれてストレートに届く(指向性が高くなる)性質を持つ。

 ここで問題になるのが、音の反射だ。

 リスナーに届く音は、スピーカーから直接届いた音(直接音)だけでなく、壁などに反射し、少し遅れて届く間接音が含まれている。特に低音は前方だけでなく、後方に音が回り込む。結果、低音が遅れて聞こえたり、反射した音が直接音と干渉し、音のにごりや位相ズレの原因になったりするのだ。

 そこでB&Oは、マイクを使った計測データをもとに算出したカスタムフィルターを使い音の反射を補正する。ウーファーも前方のほかに左右の斜め後ろに向けて置いて、特に影響が出やすい低音の拡散方向をコントロールしている(Active Room Compensation)。

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電源を投入すると、このツィーターがじわじわと上がってくる

 一方指向性がきつい高音に関しては、ツィーターの前にAcoustic Lenzと呼ぶ拡散パネルを用意している。その角度を変えることで、音が飛ぶ方向をビームのように絞ったり、180度まで開いて広い範囲に音が届くようにもできる(Beam width contro)。

 設定の切り替えはワンタッチ。一人で聴く際には、音が最も良く聴こえるスイートスポットに向けて音を出し、族や友人と楽しむ場合はより広い範囲に音が広がるようにする。シーンに応じた選択ができるわけだ。

 また、スピーカーとリスニング位置の距離をマニュアル指定することで、レイアウトの都合上、対称に置いたスピーカーの中央で音を聴けない場合でも適切なステレオ感が得られるようにする機能なども備えている。

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 フロア型の機種であるため、幅は45.5㎝(設置部分は28.5㎝)、高さは103.6~108.2mmとそれなりのサイズだが、パワーアンプを内蔵しているため、必要なケーブルはプレーヤー(ソース機)とスピーカーの接続、スピーカー同士の接続、そして電源だけと思いのほかシンプルである。上述の調整機能により、レイアウトの自由度もある。

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 7つのドライバーユニットはそれぞれ300W、合計1200W+1200Wのスイッチングアンプ(ICE Power)で駆動する。信号処理はアナログ・デバイセズのDSP「ADSP-2189」を使用。左右のスピーカーは有線(Digital Power Link)または無線(96kHz/24bit対応のWiSAもしくはWireless Power Link)で接続し、左チャンネルがマスター、右チャンネルがスレーブとなる。各種入力端子はマスター側に備える。ハイレゾ対応のDAC機能も備えており、デジタル入力(最大192kHz/24bitのUSB/同軸または最大96kHz/24bitの光)も可能だ。有効周波数帯域は15~43kHzとなる。

B&O

テレビというより、高音質なサラウンドシステム

 一方、BeoVision EclipseはLGと共同開発した有機ELテレビで、55型と65型の2種類がある。B&Oの高音質なスピーカーにLG製の4K/HDR対応パネル(HDR 10/Dolby Vision対応)を組み合わせ、「最高品質のスピーカーに有機ELパネルを付けた“ビデオシステム”」としている。

B&O

 単体で3ch(左右+センターで合計450W)の再生ができる。テレビでなく、敢えてビデオシステムと呼ぶのは、スピーカーの追加で最大7.1chサラウンドまで拡張できるためだ。その際、本体にサウンドモジュールを内蔵しており、AVアンプの追加は不要だ。USB HDDへの録画機能も持つ。

B&O

 アルミボディの本体には専用スタンドが付いていて、画面が左右に90度スイベルする。さらに支柱の部分は、円形プレートの中心ではなく円周近くに固定されていて、画面を前にせり出すこともできる。なお、オプションで壁掛け用のブラケットがあるが、これも60度のスイベルが可能。デザイン性も配慮し、ファブリック素材のスピーカーカバーを5色用意する。

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B&O

 機能としては、webOS 3.5搭載のスマートテレビで、AirPlay、Bluetooth、Chromecast、DLNAなどにも対応する。NetflixやAmazon Prime Video、DAZN、TSUTAYA TVといった映像配信サービス、SpotifyやTuneInなどの音楽ストリーミングサービスも利用できる。

 HDMIは端子はスピーカー部に4系統、ディスプレー部に4系統装備。

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 本体サイズと重量は55型が幅139×奥行き12.2×高さ99.5cm/33.1kg。65型は幅161.1×奥行き12.2×高さ111.8cm/41.8kg(ともに本体のみ)。フロアスタンドの重量は25.2kg、壁掛け用のブラケットは8kgだ。

 BeoLab 50は税別475万円、BeoVision Eclipseは55インチが税別171万3000円から、65インチが226万9000円からと気軽に買える機種ではないかもしれないが、最上級の体験を提供する製品と言える。