一見、無茶苦茶に見えるが
北朝鮮にも合理的戦略はある

北朝鮮の瀬戸際外交が心理学で見れば合理的な理由「何をしでかすか分からない狂犬」と世界に思わせることには、心理学的に見て大きなメリットがあります 写真:労働新聞(電子版)より

 ここのところニュースやメディアで北朝鮮のことが報道されない日はない。それだけ北朝鮮の動向が世界に影響を与えているということだが、その北朝鮮の「戦略」についてはあまり解説されていないように思える。

 一見すると、北朝鮮は金正恩という独裁者のもと、彼の意のままに動いているように見えるが、筆者は国家運営はそれほど甘くはないと考えている。独裁者と一蓮托生で死ぬくらいなら、国家の生き残る道を、死を覚悟で提言する側近は、我々が想像する以上に多いだろう。

 金正恩にしても、自分の感情に基づいたその場限りの意思決定で国を滅ぼしてしまっては元も子もないことぐらいは気づいているはずだ。国際社会における北朝鮮の力を考えれば、感情に任せた暴走があっという間に滅亡につながることは痛いほどわかっているだろう。

 したがって、一見無茶苦茶に思える北朝鮮の動向には、少なくともある程度の合理的戦略が背景にあるように筆者には思えるのである。

 筆者は国際情勢の専門家ではなく、得られる情報も一般メディアからだけだが、それでも北朝鮮は少なくともいくつかの合理的な戦略をとっているように思える。

 国際政治学者のロバート・アクセルロッドは、国家間の関係をゲーム理論で分析したパイオニアだ。彼は、国益を第一とする「エゴイスト」である国家の集まりが、協調的な関係を築くことが可能か、という問題を解くために、ゲーム理論を使った研究を行った。