いま、遺言や相続で悩まれている方が増えています。人それぞれ、いろいろな問題を抱えていますが、遺言があった場合となかった場合では、どう違うのでしょうか。ユニークな遺言の書き方を提唱する『90分で遺言書』の著者・塩原匡浩氏に、遺言のポイントを聞く。

残念ながら、日本では
ペットに相続させることはできない

 ペットのために遺言を書く人が増えているのをご存じですか。

 あなたの大切な家族の一員であるペット、その子が頼れるのはあなただけです。万が一のとき、きちんとペットの将来も考えて、引き取ってもらえる人を決めているでしょうか。もしくは、友人に何かあった場合に、自分がそのペットの引き取り手になってあげられるでしょうか。

 ちょっとした配慮が、そのペットの命を救うことにつながります。

 ペット飼主老後問題も話題になっていますが、自分が他界したあと、ペットの将来を法的に守る方法を真剣に考える人が増えています。私の事務所に相談に来られる方々も、ペット遺言やペット信託などを検討されることが多くなりました。

 でも、すべての飼い主とペットの問題を解決しうる方法はありません。それは、飼い主とペットを取り巻く状況や諸条件が、ひとつとして同じものがないからです。そこで、ペットを取り巻く基本法律である民法について一緒に考えてみましょう。

 少し難しい話になりますが、民法では「権利の主体と客体」という考え方をします。権利の主体というのは契約を結ぶ者(法人・自然人)のことで、権利の客体というのはその契約で売買や賃貸の対象となるものです。

 そして、この客体を目的物(有体物)、つまり「物」と呼んでいます。「物」は不動産と動産に分けることができますが、ペットの犬や猫は動産にあたります。

 犬や猫は契約などの目的物にはなりえるのですが、権利の主体になることはできないのです。

 このような理由により、日本ではペットに財産を直接相続させることは原則できません。そこがアメリカなどと違うところです。

 アメリカでは被相続人の遺言により、2008年、ニューヨークでマルチーズのトラブルちゃんが約14億円(1200万ドル)を相続したり、2010年にフロリダでチワワのコンチータちゃんが約31億円(4000万ドル)の遺産をめぐって裁判に巻き込まれたりしましたが、日本ではペットは「物」であるため、このような問題は起こらないわけです。