「すずかん」のメッセージから、
保護者は何を読み取るべきなのか

教育ジャーナリスト&アクティビスト ● 後藤健夫

なぜ、いま大学入試改革なのか 
「正解主義」からの脱却

教育ジャーナリスト&アクティビスト 後藤健夫(ごとう・たけお)
1961年愛知県生まれ。南山大学経済学部卒業後、河合塾に就職。独立後は、大学コンサルタントとして、有名大学などのAO入試の開発、入試分析・設計、情報センター設立等に関与、塾・高校の進学アドバイザーも。早稲田大学法科大学院設立に入試設計・募集担当として参加。
Pearson Japan K.K. 高等教育部門顧問。『セオリー・オブ・ナレッジ―世界が認めた「知の理論」』(ピアソンジャパン)を企画・出版。(写真:石原敏彦)

 大学入試センター試験では、正解はいくつかの選択肢の中に必ず一つ用意されている。現行では正解が一つに決まらないような問題は受験生を惑わせるから「廃問」となり受験生全員に得点がされる。

 正解を選ぶ練習ばかり一所懸命やったところで、世の中で何度も出くわすであろう「正解のない問い」に最善解は見つからない。誤答を恐れて自信がない限りは発言をせず、唯一の正解を求めて右往左往する、こうした「正解主義」に陥ることは、共通1次世代以降の最大の欠点である。 

 だから大学入試を変えなければならない。インタビューでも触れたが、未だに大学入試が変わらないから高校の授業を変える必要がないと考えている高校教員がいる。

 困ったものである。

 大学入試が仮に変わらないとしても、知識詰め込み型教育ではAIが進化した時代に活躍できるような若者を育てることは不可能だ。そうした「受動的学習」はコンピュータが最も得意とする。言われたことを言われたとおりに着実にこなすことはコンピュータやロボットに任せればいいのである。

 これも触れたことであるが、大学入試改革は必ずしも高大接続システム改革である必要はない。「思考力、判断力、表現力」を問う入試問題にすることで入試自体を変えることは可能である。具体的には個別試験で記述式問題を出題することである。こうした大学入試問題改革は、実は難関国立大学では既になされている。

 京都大学の英作文の出題は、評価の観点を複数含んだ、唯一の正解を求めるものではないものとなっている。首都大学東京の生物の出題のほぼすべてが実験考察の論述をさせるものとなっている。「生物は暗記科目」といった認識では太刀打ちできない。