累積募金額は1億2000万円

千趣会「えがおの森」ホームページ

「えがおの森」には、「ハハトコのグリーンパワー教室」の他、東日本大震災で被害を受けた母子を支援する「東北ハハトコかけはしプロジェクト」や、乳がん予防を目的とした「ピンクリボンプロジェクト」などのプログラムがあり、それぞれ継続的な取り組みが続けられている。これらのCSR活動がユニークなのは、全ての活動資金がCSR予算や事業予算ではなく、通販事業「ベルメゾン」の会員からの募金によって賄われている点だ。

 これまでの募金総額は、「ハハトコ東北基金」「ピンクリボン基金」「グリーン基金」を合わせて1億2000万円超になっており、これは一企業が顧客から集める募金額としては、かなり大きな金額といえる。これだけの募金が寄せられる秘密はどこにあるのだろうか。

 会員との深い関係──。それが考えられる一つの答えだ。千趣会の歴史は、1954年にスタートした女性向けのこけし販売事業にさかのぼる。その後、料理レシピカードの販売、カタログ販売など、女性顧客を中心としたビジネスを一貫して続けてきた。2011年に企業ビジョンを「ウーマンスマイルカンパニー」としたのも、世の中の女性を笑顔にするビジネスを続けていくという企業としての意思の表明である。そうして積み重ねられてきた主に主婦層から成る会員との関係性によって多額の募金が集まり、それによってCSR活動が支えられている。それが千趣会のCSRの独自性である。

 現在のベルメゾンの総会員数はおよそ1500万人、年間利用者数はおよそ400万人に上る。その中には子どもを持つ母親も多い。彼女たちが環境保全などの社会活動に募金を投じる行動には、子どもたちの将来を守るための「未来に向けた寄付」という側面があると考えられるが、そういった募金の窓口はもちろん千趣会だけではない。同じ思いを持って環境保護団体に直接募金するという選択肢もあるはずだ。それでもあえて千趣会に思いを託す形で募金を寄せる点に、千趣会と会員との絆の強さが見て取れる。千趣会は、顧客が自社に寄せる信頼感を社会事業につなげていく仕組みをつくり上げることに成功しているということだ。