[東京 29日 ロイター] - 退職後も働く意欲のあるシニアと企業をつなげる動きが活発化している。シニアに特化した人材派遣会社には、登録希望者が後を絶たない。人手不足を補う「働き手」としてだけではなく、シニア世代が持つ経験や知見の活用も広がりを見せる。

職種や働き方による需給のミスマッチが改善していけば、雇用が拡大していく余地は大きい。

<高齢者の就業率は主要国で最高水準>

生産年齢人口が減少し、高齢化が進む中、シニアの活用は日本社会にとって課題となっている。総務省によると、65歳以上の高齢者は就業者の11.9%(2016年)と、1割以上を占める。高齢者の就業率も22.3%と、米国の18.6%、カナダの13.1%など他の主要国と比べて高く、最高水準にある。

しかし、ジョブズリサーチセンターが昨年、60―74歳の6000人に調査したところ、5年以内に仕事探しをした人は回答者の26.1%、新しい仕事が決まった人は回答者の11.4%にとどまった。

年齢制限に加え、職種が限られ、求人数も少ないなど、年齢が高くなると仕事が見付かり難くなっている現状がある。

厚生労省が発表している有効求人倍率は、バブル期超えを記録している。しかし、運輸や建設業が全体を引き上げており、高齢者に合う仕事は限定的だ。

<シニア層、長期安定の就労望む>

人材派遣のフルキャストホールディングス<4848.T>は、今年3月にシニア層に特化した新会社「フルキャストシニアワークス」の営業を開始した。立ち上げ当初、これまでフルキャストHDが主に扱っていた短期での仕事を中心にしていたが、シニア層からは、週2―3日でも長期間働きたいとの希望が多かったため、角泰寛社長は「立ち上げて2―3カ月で方向を大きく変えた」と話す。

開始から7カ月で働きたいシニア層の登録者数は、2000人近くに達している。しかし、現状は、受け入れ側の企業数が十分とは言えないという。

角社長は、就業先を確保するため、人手を必要とする企業の作業を切り分け、シニア層を活用できるように提案している。「自宅からの距離や作業内容、時間帯など希望に見合う仕事があれば、動くことができる人が多くいる。仕事に就くことができていない登録者は、まだたくさんいる」と述べ、就業者拡大の余地は大きいとしている。

<企業・個人の海外進出を支援>

個人の経歴や能力を活かす動きも出ている。

秋月康孝氏(66)は、NEC<6701.T>で海外貿易を担い、駐在も含めて約30カ国で仕事をしてきた経歴を持つ。

退職後、米国のワイナリー立ち上げに関わったことから、人材派遣などを行っているサイエスト(東京港区)のインキュベーション(創業支援サービス)事業として、ナパ・ヴァレーやソノマの希少なワインを販売する完全会員制の事業「THE STELLA」を立ち上げた。

サイエストは「企業と個人のグローバル化支援」を事業としている。秋月氏のように、上場企業で役員などを経験したシニアを審査の上で登録。海外事業のサポートを中心に企業に派遣するほか、インキュベーション事業として、ワイン販売のほか、再生可能エネルギーや海外進出企業の視察ツアーを手掛ける旅行会社、日本の食品を輸出する会社を、その道のエキスパート達が立ち上げている。

秋月氏は「貿易、海外営業、現地法人経営などのノウハウを別の会社に提供したいと思った。車もそうだが、走り続けた方がエンジンの調子はさらに良くなる」と意欲は衰えない。

サイエスト共同創業者の李嘉章CEOは「日本企業が海外進出するうえで、グローバル人材が社内にいないケースが多い。英語が話せて、海外経験があり、失敗経験・成功体験をしているシニアは、グローバル人材として一番厚い層だ」と考え、シニアの顧問派遣を開始。

2013年の設立以降、すでに4000人超が登録している。企業や個人の海外事業展開というニーズに絞ったことで、仕事をしたいシニアと受け入れ側の「ミスマッチ」を解消するひとつの方法となっている。

<現役時代の肩書き・役職は忘れて>

シニア層は若者のようにネットを駆使して、仕事を探すことが難しい。ハローワークで自身の希望する仕事を見付けることもハードルが高い。フルキャストシニアワークスの角社長は「どこかパイプ役になる企業は必要」と考えており、働きたいシニア層と人手不足の企業のためにも、人材登録の仕組みがうまく稼働するようにしたいと述べている。

秋月氏は「現役時代の肩書き、役職は忘れるべき」としたうえで、「まさしく『あおいくま』(あきらめない、怒らない、いばらない、腐らない、負けない)の精神で、何事もやってみせることが大事。また、どこへ行っても、いつになっても学習する心が大事だと思う」と、仕事を探すシニア層にアドバイスを送っている。

*見出しを修正しました。

(清水律子 編集:田巻一彦)