大正時代から現代まで、その時代の経済事象をつぶさに追ってきた『週刊ダイヤモンド』。創刊約100年となるバックナンバーでは、日本経済の現代史が語られているといってもいい。本コラムでは、約100年間の『週刊ダイヤモンド』を紐解きながら歴史を逆引きしていく。

「ダイヤモンド」は1937年3月1日号で有力政治家を招いた大座談会を掲載している。タイトルは「新日本の『前夜』を語る」。サブタイトルは「革新情勢と大陸政策、結城財政と生産力拡大問題、議会・政党と大衆」。今回は前回に続き、この座談会を紹介しながらファシズムへの道、そして政党政治の危機をみる。

 出席者は以下のとおり。

・芦田均(立憲政友会代議士)
・木村正義(立憲政友会代議士)・・・発言を前回掲載
・水谷長三郎(社会大衆党代議士)
・風見章(無所属代議士)・・・発言を前回掲載
・村松久義(立憲民政党代議士)
・北昤吉(無所属代議士)
・山崎靖純(山崎経済研究所長、経済評論家)

・阿部留太(ダイヤモンド社取締役)
・石山賢吉(ダイヤモンド社社長)
・野崎龍七(「ダイヤモンド」主筆、司会)

「現状打破」を訴える代議士や革新官僚に
不満を抱いていた芦田均

 前回は風見章と木村正義の発言を紹介した。今回登場するのは、1948年3月10日から造船疑獄で辞任する10月15日まで首相をつとめた芦田均(1887-1959)と、哲学者にして無所属の代議士、北昤吉(1885-1961)である。

 風見と木村が、政党から閣僚を入れず、政党をまったく無視した組閣(林銑十郎内閣1937年2月2日―6月4日)について、政党政治の危機をあらわにしているのに対し、芦田と北はまったく違う見解を述べる。