[ワシントン 28日 ロイター] - トランプ米大統領は目玉公約こそ達成できていないが、実は既にさまざまな形で米国民の暮らしを変え始めている。就任からの9カ月でトランプ氏は積極的に規制撤廃に動き、大統領命令を発したり環境基準を修正してエネルギーから航空まで各種業界のルールを書き直してきた。

政権は内部で足並みがそろわず、トランプ氏自身の決定も衝動的で気まぐれな面があるとはいえ、米国の社会と経済への影響は幅広く、持続性を持つ可能性がある。

こうした変化の一部は大きなニュースとして伝えられている。しかしその多くは、日々の論争やトランプ氏によるツイッターの「炎上発言」などに紛れて気づかれないうちに進行している。

例えば、石油はいつの間にか「ダコタ・アクセス・パイプライン」を通って輸送されており、米国内で生活する不法移民の拘束件数は増加した。石炭採掘に開放される連邦政府所有地はより多くなっている。

もう少し細かい面でも、オバマ前政権時代に制定されたいくつかの規則が撤回されたり、導入が先送りされた。これには退職者の貯蓄を無節操な金融アドバイザーから守るためものや、インターネットのプロバイダーによる顧客の個人情報利用を制限したものなどが含まれる。

いずれもトランプ氏が約束した派手な政策変更に比べると目立たないものの、実際の効果という点では遜色はない。保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)の政治アナリスト、ノーム・オーンスタイン氏は「トランプ氏はすさまじいほど多くの政策を生み出し、同時に解体している」と指摘した。

トランプ氏は、医療保険制度改革(オバマケア)改廃やメキシコとの国境の壁建設などの問題で議会の承認を得られず窮地に追い込まれたことで、行政権限の行使に活路を見出した。

その権限の範囲内でこれまでに数百の規制や規則を撤廃し、47の大統領命令に署名したほか、オバマ前政権終盤に承認された規制を無効にするために「裏技」とも言える議会評価法を14回も適用した。この法律は、16年前に一度使われて以来ずっとほこりをかぶっていた。

<役所を規制>

トランプ政権は発足からの半年間で、前政権時代の規制措置800件余りを撤廃するか、導入を遅らせた。また個人の自由を最大限尊重するリバタリアン系のシンクタンク、コンペティティブ・エンタープライズ・インスティテュート(CEI)によると、既存の規制撤廃や延期を目的としたものも含む新たな規制の提案件数は、前年同期比で32%減少し、ジョージ・W・ブッシュ政権とビル・クリントン政権の最初の半年よりも少ない。

一方でトランプ氏は連邦政府機関に対して、新しい規制を1つ策定する場合は2つの既存規制廃止を義務付けるなどの制約を設定している。CEIの政策担当バイスプレジデント、ウェイン・クルース氏は「ロナルド・レーガン政権以降で最も大幅な規制撤廃の動きになっているのは間違いない。トランプ氏は今のところ、一般国民よりも役所を縛ろうという姿勢だ」と話した。

多くの企業経営者は、トランプ氏が経済活動を阻害していると自身でみなす政策を廃止する、という約束を果たそうとしていることに拍手を送っている。ただ、環境規制や労働者保護規制を減らすこうした動きは国民の健康や安全よりも企業利益を優先し、支援してくれた労働者層へのアピールにトランプ氏が掲げてきた公約とは完全に矛盾するとの批判もある。

<実質的成果>

トランプ氏は、法制化の手続きが滞っている問題のいくつかに関しても、自分の思うような方向に事態を進める手立てを見つけ出している。一例を挙げると、オバマケア改廃法案は議会を通過できなかったが、同氏が低所得層向け政府補助金支払いの削減をちらつかせたため、先行き不透明感から大手保険会社がいくつかの州の保険販売サイトから撤退するか、来年の保険料を大きく引き上げた。

また国境の壁建設計画も議会で審議が停滞しているものの、トランプ氏の強硬な発言が米国への不法入国抑制に効果を発揮したとみられる。1月に4万2000人を記録したメキシコとの国境で検挙された不法入国者数は6月がおよそ1万6000人で、63%も減少した。その後じりじりと増えているとはいえ、昨年の水準はなお下回っている。

一方、米国内で逮捕された不法移民は急増。トランプ政権発足からの100日の拘束数は、前年同期より40%近く増えた。ロイターが確認したデータによると、入管当局によって逮捕・拘束された犯罪歴のない移民の数は1月から7月までに200%強も増加した。

保守系シンクタンク、ヘリテージ財団で議会問題などの担当ディレクターを務めるトミー・ビニオン氏は「トランプ氏は実際に多くの成果を積み重ねている。保守派にとって喜ばしいものがたくさんあり、それがもっと増えると楽観している」と述べた。

(John Whitesides記者)