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日本を元気にする新・経営学教室

売り手と買い手に情報格差があるとき
取引上の問題解決に貢献する「評判」の役割とは
京都大学大学院経営管理研究部教授 成生達彦

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],根来龍之 [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長],松尾睦,髙木晴夫
【第34回】 2011年10月17日
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 売り手は財の品質についての多くの情報を持っているが、多くの場合、買い手(消費者)は必ずしも品質を判別できるとは限らない。いま、取引に際して、買い手が良質品と低質品とを区別できないとしよう。このような情報の非対称性は、市場取引を行うに際していかなる困難を引き起こすか? このことを、(中古車ディーラーがいない)中古車の市場を例にとって考えてみよう(米国の中古車取引では、ディーラーが介在しないことが多い)。

情報の非対称性があると……

 中古車の品質は必ずしも一様ではなく、良質なものから質の悪いものまでさまざまである。しかし、買い手が良質品と低質品とを区別できない場合には、両者は同じ価格で取引されることになる。いま、市場で価格pが成立したとし、売り手にとって、この価格と無差別な車の品質をQとしよう。

 このとき、中古車の売り手(すなわち所有者)は、自らの車の品質を知っているから、当該の車が市場価格よりも価値がある場合には、売らないで保有し続ける。したがって、市場に供給されるのは価格pで売ってもよい低質品(Q以下)の車のみとなる。

 供給された中古車の(平均)品質を反映して、価格が下がったとしよう。このときには、供給される中古車の品質は一層低下する。このようなプロセスが繰り返し生じる結果、良質品は市場で取引されなくなる。

 このことは、次のようにも説明することができる。いま、中古車の品質Qが[0,100]の範囲に一様に分布しているとしよう。売り手は品質Qの車をQ万円と評価し、買い手は(5割高く)3/2×Q万円と評価しているとする。ここで、市場価格がp(万円)になったとしよう。このとき、品質を知る売り手はQ>pの車を乗り続け、中古車市場には出さないだろう。

 したがって、中古車市場に出てくるのはQ≦pの車だけである。このとき、市場に出ている中古車の平均品質はQ/2となる(品質は一様に分布しているため)。品質を判別できない買い手は、平均品質Q/2の中古車を(5割高く)3/4×Q万円と評価する。一方、中古車の価格はp=Q万円で、買い手の評価額を上回っているため、誰も中古車を買おうとしなくなり、市場がなくなってしまう。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。

根来 龍之(ねごろ たつゆき) [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長]

京都大学卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了、鉄鋼会社、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。京経営情報学会会長、国際CIO学会誌編集長、CRM協議会副理事などを歴任。2001年度より早稲田大学教授。2010年10月より早稲田大学ビジネススクール・ディレクター。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『デジタル時代の経営戦略』(共編著、メディアセレクト)、『CIOのための情報・経営戦略』(共編著、中央経済社)など著書多数。ブログ「ITと経営」

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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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