9月下旬に新機種が発売されることが恒例となっているiPhoneは、クリスマス商戦を含む第1四半期(10~12月期)に最も売れる(図(2))。その後、販売台数が減少していき、新機種の発表が迫り買い控えが起きる第3四半期に最も落ち込むのだ。

 アップルにとって、第1四半期の3カ月こそが、年間売上高の約3分の1を稼ぐ最大の書き入れ時。この3カ月の売り上げが年間業績の命運を握るのだ。

 しかし、一部の時期に売り上げが集中することは、デメリットも大きい。部品調達や輸送などのコストが膨れ上がるからだ。

 年間を通してiPhoneを売り続けたい。アップルとしては当然、そう考えるはずだが、苦い失敗がある。16年3月に投入した廉価版のiPhoneSEである。

 15年9月に発売したiPhone6sの販売不振を受けて急きょ投入したような形になったが、販売台数の減少を食い止められないどころか、iPhoneの平均販売単価の下落を引き起こした。

 アップルの高収益体質を支えているのが、強気な価格設定だったのだが、廉価版を投入したことで16年度第3四半期の平均単価は600ドルを割り込む事態になり(図(3))、15年ぶりの減収減益を引き起こす一因となっている。

 こうした視点から見ると、ティム・クックCEO(最高経営責任者)が今回、8とXを同時発表した意図が伝わってくる。

 まず最大の稼ぎ時のど真ん中でXを投入し、8とXの“2段ロケット”効果での売り上げ増を狙う。そして、最安でも999ドル(約11万円)というXを敬遠する人には、廉価版や旧機種ではなく、8を代替案として選んでもらうことで端末価格の下落を抑え込む。

 発売10年の節目で初めて仕掛けた「二つのiPhone」というクックCEOの“賭け”の裏には、そんな狙いが透けて見える。

 「二つのiPhone」戦略で成長神話復活をもくろむアップルにとって、アキレスけんになりそうなのが、成長市場と見込んでいた中国で苦戦が続いていることだ。