英スーパー最大手のテスコは8月末、日本からの撤退を決めた。2000年代前半に、欧米の大手小売りが相次いで日本に参入した。しかし、05年3月の仏カルフールに続く敗退により、“日本市場の特殊性”があらためてクローズアップされている。だが、テスコが撤退した原因は、別のところにあるようだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

【企業特集】テスコ<br />日本進出から丸8年<br />英最大手が撤退した本当の訳2009年12月には初めて「テスコ」ブランドのスーパーを出店したが、知名度を高めることはできなかった
Photo by Toshiaki Usami

「日本では8年間、R&D(研究開発)をやったが、十分な事業規模は築けないと判断した」(フィリップ・クラーク・テスコCEO)

 英スーパー最大手のテスコは8月末、日本事業の撤退を発表した。今後は中国、インド、マレーシアなどに注力する方針だ。国内129店舗のうち、すでに12店舗の閉鎖を決定しており、残る店舗の売却先が決まり次第、日本から撤退することになる。

 テスコは2003年7月、旧シートゥーネットワーク(以下、シートゥー)を約300億円で買収することで日本に進出した。

 04年8月にはフレック、05年10月にはタネキンという中小規模のスーパーを買収。しかし既存店の売上高はほぼ毎年下がり続けた。10年には137店 舗となったものの、その後は不採算店の見直しのため、店舗数は減少に転じた(下図参照)。

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 世界14ヵ国に約5400店舗を持つテスコは、約8兆円の売上高を誇る世界有数の小売り企業だ。

 最大の強みは優れたCRM(顧客 関係管理)の仕組みにある。

「クラブカード」と呼ばれるポイントカードの購買履歴を使い、「世界で数社しかできない」(矢矧晴彦・デロイト トーマツコンサルティング・パートナー)といわれる高度な分析を行うことで、顧客の購買傾向を把握。地域ごとに品揃えを変えたり、プロモーションを行った り、顧客にダイレクトメールを送ることで集客を図る。

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 しかし、そのシステム投資を行うには、「700~800店舗が必要」(テスコジャパ ン広報担当)なため、日本では導入できなかった。

 テスコの撤退、その理由として指摘されるのが、日本市場の特殊性である。

 過去にさかのぼれば、鳴り物入りで日本にやって来た外資小売り企業の大半は、撤退を余儀なくされている(右表参照)。

 その典型が世界2位の仏カルフールだ。2000年に進出し、メーカーとの直取引による低価格路線を推し進めたものの、多様な品揃えを求める日本の消費者ニーズへの対応に苦しみ、05年、店舗をイオンに売却して撤退した。