「貧困の下」に陥りかねない外国人の子どもたち、急がれる教育支援小学高学年(相当)を対象とした算数の授業。この時のテーマは「比例と反比例」。算数・数学は、数字・数式という世界共通言語があるため、日本語の壁はかなり低いようだ

外国人とその子どもたち、
目に見えない貧困に喘ぐ人々

 米軍横田基地のある東京都福生市に、「YSCグローバル・スクール」という小さなフリースクールがある。主対象は、外国にルーツを持つ子どもと若者だ。「おおむね30%は、日本語が全くできない状態で来日しています」と、責任者の田中宝紀(たなか・いき)さんは語る。

「ペンシルビル」というほど小さくはないが、大きくもないビルの1フロアがパーティションで仕切られ、2つの教室・事務所・応接コーナーを兼ねている。教室は、朝9時から夜8時までフル回転だ。

 YSCグローバル・スクールに通う生徒たちは、年間で延べ100名程度。1日あたりではおおむね40名の生徒たちが、近隣から、あるいは埼玉県や神奈川県から通う。無理なく通える地域には、同等の教育機関がないからだ。

 通うことは考えられない遠隔地の生徒たちのために、オンラインコースも用意されている。学費は年間で10万円~25万円程度。高額とは言えないが、親の経済状況によっては重すぎる負担となる。このため、分割払い、クラウドファンディングによる奨学金、高校進学コースに対する公的支援などの経済的支援も用意されている。

 生徒たちの親の事情は様々だ。技能ビザで日本に滞在している父親がレストランを開業し、母親とともに経営している場合もある(家族には週あたり28時間までのアルバイト労働が認められる)。日本人との間に子どもを設けた外国人シングルマザーは、YSCグローバル・スクールの生徒たちの親の30%程度にあたるということだ。現在は、出身国コミュニティを通じてアルバイト労働に就くことは、本人が健康なら困難ではない。

 生活保護世帯は、現在の福生市の他に、清瀬市・足立区にも教室があった時期を通算して10%未満、「現在は2%程度」(田中さん)ということだ。そもそも現在、就労など長期滞在ではない在留資格で日本に滞在している外国人は、原則として生活保護の対象にならない(前回の記事参照)。