株式レポート
10月5日 17時53分
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スペイン・カタルーニャ"独立"問題の今後のシナリオ - 金融テーマ解説

● カタルーニャ自治州の住民投票は、独立派が圧勝。一方、スペイン政府はこれを違憲として退けている。この混乱がユーロ、株、債券全ての上値を抑えている。

● 独立は金融面で問題山積で、スペイン政府との交渉で穏便に収束するシナリオが合理的。但し、他地域での独立成功例もあり独立の気運が長期間燻る可能性は排除できず。

● 仮に独立運動が続き、イタリアやスコットランドに影響が波及するとしても、足元の大混乱は沈静化の方向。リスクが波及するとしても、かなり先の話で、まずはECBの金融政策正常化が先行するだろう。ユーロ、欧州株、債券いずれも当面強気。

カタルーニャ州住民はスペインからの「独立」を選択

10月1日のスペイン・カタルーニャ自治州の住民投票では、独立賛成派が9割を占める大勝となった。州政府は週明けまでに独立宣言を行うべく動いている。一方、スペイン中央政府はこれを阻止すべく、自治権停止を示唆している。現地では依然デモ等の混乱が収まらない。

これらの動きを受け、スペインの株価は大きく下落し、欧州株も若干頭を抑えられている(図表1)。また、スペイン国債利回りは、ドイツなど欧州金融機関のリスクが懸念されていた2016年2月以来の1.7%台に上昇した(価格は下落、図表2)。ユーロも一時期の上昇が一服している(図表3)。

しかし、下記の通り、独立は金融面で相当な困難を伴う。このため、「独立」を宣言するとしても、実際には、独立を強行する以外の落としどころをスペイン政府と交渉するというシナリオが合理的だと思われる。

独立実行の課題:金融的には厳しい現実が

外部調達の難しさ

カタルーニャは、スペイン全体のGDPの約20%、人口の16%を占め、スペインの17の自治州で最大となっている。GDP規模でいえば、デンマーク並みである。

しかし、だからと言ってまったく自力で金融システムを支えていけるわけではない。カタルーニャ政府は約770億ユーロ(10兆円)の負債を抱える。このうち、67%はスペイン政府から借り入れている。欧州危機の2012年には、カタルーニャが外部調達ができなくなり、スペイン政府が設定したファンドから資金を融通してもらっているなど、スペイン政府に大いに依存している。

これらの経緯で、カタルーニャ地方の現在の格付けは「B+」(S&P)と極めて低くなっている。更に、5日、S&Pは、格下げの可能性ありとして、「クレジットウォッチ」に掲載した。EUに直接参加していざという時には助けてもらうという方法はあるが、EU加盟には、EUの全加盟国の同意が必要であるため、スペイン政府が反対すれば、カタルーニャの加盟は認められない。なんらかの代替的な資金調達先が見当たらない限り、金融的には独立は現実的ではない。

金融機関の脆弱さ

地元の金融機関の問題もある。スペイン第3位の規模のカイシャバンク(Caixabank)は、バルセロナを本拠地とし、3,786億ユーロの総資産を有する。カイシャバンクに次ぐサバデル銀行もスペイン国内有数の銀行で、2,174億ユーロの資産を持つ。これらの銀行は、格付けが「BBB-」程度と、投資適格ぎりぎりである。

仮に独立後の「カタルーニャ国」所在の銀行ということになると、現在の格付けが引き下げられる可能性がある。その場合、投機的格付となり、他の金融機関との取引が難しくなる。これを回避するべく、これらの銀行が他の地域に本拠地を移してしまったら、州の個人や企業の利便性が損なわれる。いずれのシナリオでも、州内の金融システムが不安定化しかねない。

このように、独立は、カタルーニャ地方の財務、銀行経営、ひいては住民の利便性からも極めて不都合になる。合理的に考えれば、短期的に独立を強行するという選択肢は考えにくいだろう。

想定される穏便シナリオ vs リスクシナリオ

とはいえ、「独立」に投票した人々の期待を盛り上げてしまったことから、カタルーニャ政府としても全く何の成果もなく引き下がるわけにはいかないだろう。一旦「独立」を宣言しても、スペイン政府と、これまでの不利な制度の是正を求めていく可能性もある。

短期的な落としどころとして考えられるのは、スペイン政府から、税務面の優遇を引き出すか、予算配分を厚くするなどの妥協案を引き出すことだろう。

一方、リスクシナリオとしては、独立を掲げて混乱が長期化する可能性がある。かつて、同じように、財政の配分などへの不満で独立国家を築いたスロヴァニアは、1991年にユーゴスラビアからの独立を果たした。その後財政の改善が進み、2004年にEU加盟も果たし、国の格付けは「A格」まで改善している。中長期的にはカタルーニャにも独立のシナリオはありうる。

混乱長期化の影響が気になるのは、イタリアとスコットランドである。イタリアは来年春までに総選挙が行われる。反EUを掲げる「5つ星運動」は、近時やや穏健化していると報じられているが、カタルーニャの独立運動が続けば、再びナショナリズム路線に舵を切る可能性がある。また、スコットランドは、2018年秋以降にイギリスからの独立を問う住民投票をする意向を表明しているが、独立派が勢力を強める可能性が高いだろう。

市場への影響:いずれにしても足元の混乱は沈静化へ

最も可能性が高いシナリオは、なんらかの財政面の条件交渉で合意に至るというものである。だとすると、ユーロや欧州株の最近の下落分は挽回できる可能性が高い。

また、仮にカタルーニャの独立運動が続いたとしても、EU全体に対して直ちに大きな影響が出るわけではない。イタリア等に影響が出るよりも先に、金融政策の正常化議論がなされるだろう。万一、独立が断行されるとしても、EU全体を脆弱化させるものではない。このようなシナリオから、短期的には、欧州債券、株式、ユーロいずれに対しても「強気」である。

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