あああ

 SPICA MUSICAの代表、景山将太氏は、『ポケットモンスター』シリーズや『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズといったビッグタイトルに関わる作曲家として知られる人物だ。独立前はゲームフリークに所属しており、最近ではスマートフォン向けゲーム『黒騎士と白の魔王』などの作曲でも知られている。

 そんな景山氏が作曲家として成功をおさめるに至った大きなきっかけのひとつには、DTMとの出会いがあるという。景山氏は、どのようにして世間に評価される作曲家になったのだろうか。

サウンド全体の統括をしながら
必死で曲を書いた会社員時代

ーーゲームフリーク時代もDTMを使って作曲されていたんですよね。

「そうです、ゲームフリークに『Cubaseを入れよう!』って言ったのは僕です(笑)。僕は、ゲームフリークでは、初めてサウンドデザイナーとして採用してもらった作家だったんですね。

 ゲームフリークに入社して、まずは機材や制作環境を整えるところから始めました。僕自身、機材関連のメーカーの方とのつながりも多く、また機材やプラグインについても色々と提案できることが多かったので、まずはそこから取り組んでいきましたね。ただ、会社だからといって、なんでも買ってもらえるわけではないですよね。だから、プラグインや音源も、プライベートで実際に買って使ってみて、いろいろ検証してみた上で提案していましたね」

ーー純粋な作家だけでなく、いろいろな業務をされていたんですね。

「『ポケットモンスター X・Y』ではサウンドディレクターも兼任していたので、プログラマーやデザイナーと企画を練ることも多かったんです。音楽を書くだけではなくて、ゲームの音に関するあらゆる業務を担当していました」

ーーそこから、独立を経て、ご自身の制作ブランド「SPICA MUSICA」を設立されました。作家活動に集中したいという意味合いもあったんでしょうか。

「そうです。一番大きい理由はそれで。独立する前は、ディレクションや管理・チーム統括の仕事に回る機会も多くて、かつ、辞める前の時期は、どんどんその比重が高まっていたんですよ。『このままだと曲が書けなくなるんじゃないか?』という恐怖があったんですよね。でも、どうしても曲が書きたいから、土日とか夜とか、必死で時間を捻出して曲を書いたりしていて。

 サウンド全体の方向性を考え、ディレクションすることもとてもやりがいのある仕事でしたが、作曲家としていい音楽を書くことも同時に絶対に譲りたくないことでした。

 『このままだと、曲を生み出せなくなる』って思ったんですけど、諦めたくなくて、サウンドディレクターの仕事をしつつ、専業の作曲家が書くくらいの量を書きました。もはや僕の意地です」

スマホ時代の作曲の面白さ

ーー最近はスマートフォンゲーム『黒騎士と白の魔王』のお仕事をされていますね。スマートフォン向けだと、アップデートがあるので、新たに音楽を追加する機会も多いのではないでしょうか。

あああ

「ありますね。新たに配信されるクエストやモンスターとの戦闘などに合わせて、リリース後も曲をどんどん書いていますよ」

ーー据え置き機の時代は、一度書き終えたら、そこでその仕事は手を離れるわけですけど、スマートフォン向けだとそうもいかないですよね。そんな中で、違った感覚が生まれたりといったことはありましたか?

「音楽を書くという意味では、何も変わらないですね。据え置き機の音楽と、表現できることも作り方も、ほぼ変わらないですし。単純に、アップデートなどのイベントに合わせて曲を書く機会が増えたという感じです。

 でも、『面白いな』と思っていることがあって。それは、作品のファンの方の意見や感想をSNSで確認して『こういうのがウケるんだな~』とチェックできるのが、今の時代はならではですよね(笑)」

ーーときには、ネガティブな意見を目にすることもあるのでは?

「それもありますね、でも、あくまで一意見として捉えるくらいで、創作する上では、世の中の意見ばかりを気にしすぎると、本来作るべきものの方向性からブレが生じてしまうこともありますから。それに、この作品に関しては、ヘッドフォンでじっくりと聴きこんでくれている人も多いなと感じていて、うれしく思っていますよ。

 このゲームは『別格』をキーワードにしていて、アニメーションも、音楽も、すごくこだわって作っているんですね。スマートフォンのゲームで、ここまでダイナミックに、こだわっていいものを作ろうと挑戦している作品は、なかなかないだろうっていうくらい。音楽はフルオーケストラを録音していますし」

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『黒騎士と白の魔王』では、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の生演奏を録音した

ーー生で録っているんですか?

「そうなんです。チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の生演奏を録音しているんですよ」

ーーそれはすごい! オーケストラ向けのアレンジになると、トラック数も大きくなりますよね。

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チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の生演奏をレコーディングした

「生で録るっていうのは開発当初から決まっていたので、今回の場合は、生で録ることを前提に作曲していました。このプロジェクトでは、オーケストレーターの方を立てていて、オーケストレーション、譜面作成をしていただく中で、スピーディーに作業を進めていただけるように工夫をしていました」

ーーどのようなテーマで作曲されたのでしょう。

cagey

「依頼があったときに『ダークファンタジーなので、重厚なサウンドが欲しい』と言われたんです。ところが、僕は今までの作風が、すごくポップな印象の作家だったんですね。

 一番最初に『ダークで重い音楽でもいけますか?』って聴かれたんですよ。『待ってました!』と思ったんです。いままでの作品では見せられなかった、新しい自分の表現の引き出しが世の中のユーザーの皆さんに見せられたと思うし、すごくこの作品を気に入っていますよ」

ーー確かに、景山さんというと、ポケモンのイメージは強いかもしれません。

「いままでの僕の作品では、仲間との死別や、攻撃的で重苦しいテーマというのはあまりなかったかもしれませんね。作家としていままで描いたことのない新しい世界を表現できることは、とてもいい経験でした。

 僕はもともと、シナリオや絵に音をつける作業がすごく好きなんですね。この作品では、海外でのオーケストラレコーディングや、今までに描いたことのない新しい表現など、独立の目標にしていたことが叶ったなと思っています」

ーーひとつの作品に対して、たくさんの楽曲を制作されると思いますが、このゲームはどこから作りましたか?

「プロットと、コンセプトアート、世界観資料を見ながらイメージを広げつつ……でも、最初に書いたのは、やっぱりメインテーマだったかな」

 ゲームフリークを退社した景山氏が、SPICA MUSICAを立ち上げたのは、2014年1月のこと。いまではいくつものプロジェクトを抱えている景山氏だが、独立当初は活動していくスタイルについて、色々と悩むことも多かったという。

やっと独立してよかったと思えた

ーー独立されてSPICA MUSICAを設立してからは、お仕事のスタイルも変わったのではないでしょうか。

「ゲームフリークは、もちろん嫌で辞めたわけではなくて、すごく大好きな会社だったんです。周りの同僚・先輩や同期・後輩にもとても恵まれていたし、とても楽しい雰囲気でものづくりができていた。もしも、これが居心地の悪い会社だったら、きっと『あんなところにいるくらいなら』と思ったでしょうね。でも好きだったからこそ『辞めなければ、こんな大変な思いはしないで済んだのにな』って思ってしまうことも残念ながらありましたね」

あああ
制作に活用しているAKGのK712
あああ
ボーカルのレコーディングに使うというマイクもAKG。C414を愛用

ーーでも、作曲家としてやっていきたいという気持ちが優った。決め手はあったのでしょうか。

「30歳過ぎというのは、会社に勤めていると役職に就いたり、マネージメント的な仕事が増えてきたりして、作曲(現場の仕事)が思うようにできなくなってくるタイミングです。

 だから、フリーの作曲家で活躍している方は、そのくらいのタイミングで独立する人が多い。40代、50代まで、社内で作家だけを続けているという人は少数派で、やっぱりマネージメント側に回ることが多いんですよ。

 30代はこれからのキャリア形成をどうしていくか、人生の選択をするタイミングなんですよ。実は僕もすごく悩んでいたんです。経営やマネージメントの方も興味がなかったわけじゃなくて、むしろ、『自分にはこれも向いている』という感覚もあって。独立する前は、両方頑張ろうと思っていました。作曲家としても、経営側としても、100点満点を取ろうって。だから、最後のプロジェクトでは両方頑張って、時間がない中、必死で時間を捻出して曲を書くことになったんですけど(笑)。

 でも、ポケモンという看板だったり、会社という看板を外しても作曲家としてやっていけるかどうか、どうしても試してみたくなったんですよ。それは、僕の人生でまだ試せていないことだと思って」

ーー会社で重要なポストについていれば、なおさら勇気のある選択ですよね。

「周りには『恵まれた環境で、評価もされていて、なんで辞めるのかわからない』って言われました。それは確かにそうだし、ポジションを失う恐怖もあったんですけど、もっと歳をとったときに『作家一本でもいけたけどね』って言ってる自分は、なんか嫌だなと思ったんです(笑)。

 独立した後は不安定な時期も多かったですし、『辞めなきゃよかったな』って思うこともありましたけど、一昨年、去年あたりからプロジェクトも増えてきて、やっと、『独立して楽しいな』って思えるようになりましたね」

あああ
学生時代からCDを自主制作していた

夢中で自主制作音源を作った青春時代

ーー音楽に触れたのは、いつがはじめですか?

「幼稚園のときに、先生がピアノを弾いているのを横でじっと見ていたらしいんですよ。それで、幼稚園の先生が『ピアノに興味があるみたいですよ』と親に報告したみたいで。

 『ピアノ弾きたいの?』って親が僕にきいたんですね。4歳のとき。それで『ピアノを弾きたい』って、そういう風に言いました。いや、言ったそうです(笑)。

 それから、小学生の頃は、楽譜をアレンジして弾くのが好きでした。譜面通りに弾くより、『譜面をアレンジすること』が楽しかったんです。その頃から『作りたい』の方向に興味が傾倒していたと思いますね。小学校4年生くらいでしたかね。譜面書いて、音楽室にある楽器で友達と一緒に合奏したりとか」

ーー小学校4年生で作曲ですか!

「そう、初めて作曲したのは小学校4年生のとき。中学になってからは、はじめてCDを作ったんですよ。その時代は、いまみたいにCDドライブが付いているPCはありませんでしたから、自宅でCDを簡単に焼くわけにはいかなかった。だから、CDを制作してくれる業者があったんですよ。1枚何千円とかかけたんじゃないかな(笑)。これがまた笑えるんですけど、僕は、松江城をバックにして撮った写真をジャケ写にしていたんですね(笑)」

ーー面影があまりないですね(笑)

「(笑)。このCDは、打ち込み……打ち込みというより、伴奏機能をうまく駆使して作った曲と、ピアノソロ曲を組み合わせた作品でした。で、そのあと中学3年生の時に、DTMとの運命の出会いを果たすんですよ」

ーーDTMとの出会いも早いですね。

「選択音楽の授業のときに、PCに強い数学の先生が、MIDIの仕組みを、みんなに見せてくれたんですね。

 すごく衝撃を受けたんですよ。目の前で、MIDIで組んだオーケストラが鳴っていることに。それで『すごい、こんなのがひとりで作れるんだ!』『これを一生の仕事にしたい。DTMを絶対極めたい』って思ったんですね。高校に入ってからは『マルチメディア部』という、PCを使ってゲーム、Web、CGやプログラミングなどいろいろととクリエイティブな制作ができるクラブに入って、DTMを触っていましたね」

実はずっとヤマハユーザー

ーーちなみにどんな環境でしたか?

「プライベートではじめて買ったシーケンサーがヤマハの『XGworks』ってやつ。そのあと『XGworks V3.0』にして、そのあとが『SOL』でしょ。

 次に、スタインバーグ時代の『Cubase』にいってるんですよ。なので、Cubaseの関係した連載だから媚を売るわけじゃないけど、気がつけばずっと制作環境はヤマハなんですよね」

あああ
作曲に使っているデスクトップマシン

ーーCubaseは気に入っていますか。

「当時オーディオ編集にも強くて、MIDIの編集もできて、UIも使いやすくてわかりやすいっていうと、Cubaseという印象がありました。今日まで幾度のバージョンアップを重ねて、より使い勝手も向上していて。やっぱり安心して使えますね。人にDAWソフトを勧めるときも、まずCubaseを勧めていますね」

あああ

ゲーム会社への就職を目指すもうまくいかず

ーーその時代から、どうやって作曲家のお仕事へつながったのでしょう。

 「大学に進学する時期になり、そのときはまだ『音楽で食っていきたい』とは親に言えなかったんですよ。なので、大学では情報系の、もっと幅広くメディア全体を学ぶような学部に行ったんです。

 その学部は、授業の中で、CMやTV番組を作ったり、CGを作ったりするところで、『この学部だったら結びつきとして遠くない』と思ったのと、『PCに強くなっておいて損はないな』という考えがありました。

 でも学校の授業ではDTMは学べないので、音楽やDTMについて学ぶためにスクールにも通って。ダブルスクールをしていましたね」

ーーそうすると、就職で本格的に作曲の道へ入ったのでしょうか。

 「就職の時期になって、ゲーム音楽なら、就職をするかたちで作曲家になれるということを知って。いろいろ受けました。歌モノの作家にもなりたかったので、平行していろいろな音楽制作会社やレコード会社にデモテープを送ったりもしていたんですけどね。

 ところが、ここから僕の転落がはじまりまして。ゲーム会社、全落ちしたんです。でも、『もし、このまま音楽とは関係のない業種に就職してしまったら、そこから脱サラして音楽をやるってものすごくパワーがいるな』と思って。『俺は就職はしちゃダメだ!』って(笑)。だから、『25歳までに形にならなかったら、音楽を諦める』『それまではがむしゃらに頑張る』と決めたんです。

 ちょうどその時期に、とある関西のゲーム会社にいる先輩から、『どうせなら、少しでも音楽に関係のある仕事の方がいいんじゃない?』って言ってもらって、そこのサウンドデバッグのスタッフのアルバイトを受けて。そこから1年間くらいは、サウンドのデバッグのアシスタントをしながら、デモテープを送ったりする日々でした」

ーーほかにもお仕事はされていたんですか?

 「パソコンスクールの先生をしていた時期もありましたね。サウンドデバッグのアルバイトをする前です。で、そのデバックのアルバイトをしている時期に、『プロキオン・スタジオ』の光田康典さんに僕の音源を聴いていただける機会があり、作曲家の入り口になりました。

 ちょうど光田さんの講演が名古屋であったときに、音源と資料を渡したんです。そしたら、ちょうどその1週間後に、光田さんが作曲家を募集するというお知らせを出していて」

ーーいいタイミングです。

 「これは作曲家として活動できるチャンスだと思って。その後、いろいろとやりとりをする中で、プロキオン・スタジオに所属することになりました。『ルミナスアーク』っていうニンテンドーDSのゲームが僕のデビュー作です。そのあとはWiiの『大乱闘スマッシュブラザーズX』 というビッグタイトルも担当させてもらって」

ーーそこからいい流れになるんですね。

 「いや、とはいえ実際、色々な作品に関わるチャンスをいただきながらも、まだまだ経験不足でしたし、作家としても名前が通っているわけでもなかったので、なかなか作家一本でやっていくのは難しいなという気持ちでした」

ーーまた新しい悩みが出てきたんですね。

 「そんなときに『ゲームの音楽を書き続けるなら、ゲームそのもののことをもっと学ばないといけないな』って思ったんです」

ーーそれでゲームフリークにいったんですね。

 「ゲームフリークでは、ゲームサウンドについてはもちろんですが、ゲームとしての面白さの追求、プログラマやグラフィックデザイナー、ゲームデザイナーなど他職種の人とも連携しながらゲームを作っていくという貴重な経験を積むことができました。これは音楽を作ることだけをやっていたら、絶対に見えない景色でした。

 でも『いつかときが来たら、もう一度、作家一本でやりたい、リベンジしたい』という思いはありました。そのリベンジが、SPICA MUSICAの立ち上げなんです。

 今回、『黒騎士と白の魔王』でひとつまた作家として貴重な経験を積むことができました。これからはゲーム音楽はもちろん、アニメや映画など新しい分野にも挑戦してきたいですね」

景山将太

作・編曲家。兵庫県西宮市出身。4歳よりクラシックピアノを始め、10歳から作曲を始める。

2007年『ルミナスアーク』で作曲家デビュー。以後『ポケットモンスター』シリーズなど、ゲームミュージックの分野を中心に、作・編曲・サウンドディレクションを担当。

音楽ブランド『SPICA MUSICA』(スピカムジカ)を設立後、ゲームやアニメ、CMなどの音楽制作、アーティストへの楽曲提供など、幅広い分野で活動中。また音楽制作と並行してLIVEや講演活動なども精力的に行なっている。今年で作曲家デビュー10周年を迎える。

主な代表作
『黒騎士と白の魔王』
『ポケットモンスター X・Y』
『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』
『ポケモンコマスター』
『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』
『大乱闘スマッシュブラザーズ X』
中川翔子『KISEKI』
など。

『黒騎士と白の魔王』とは

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 従来のオンラインRPGをスマホに最適化させた、スマホ史上、最高に楽しめるオンラインRPGです。駆け引きの面白さを追求した、新機軸のバトルシステム「ウェイトシステム」をはじめ、生産やバザーなど、圧倒的なやりごたえをご提供します。詳細は公式サイトをご覧ください。

 また、公式Twitterアカウントでは、最新情報を随時発信しています。

黒騎士と白の魔王

(c)Grani, Inc.

景山将太氏のサイン入り!
サウンドトラックとクリアファイルをプレゼント!

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景山将太氏のサインが入った『黒騎士と白の魔王』の「ミニサウンドトラック」と「クリアファイル 2枚」をセットにして、抽選で5名の方に!

 『黒騎士と白の魔王』の開発会社、株式会社グラニさまより提供いただいた景山将太氏のサイン入り「ミニサウンドトラック」&「クリアファイル 2枚」をセットにして、抽選で5名の方にプレゼント!

 下記のアンケートフォームよりご応募ください。

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作曲家 kors kが紹介!
YAMAHA×ASCII.jp「kors k Cubase Tips」

第4回「実践的なエフェクトの使い方と、kors k直伝トラックチェーン」

 前回までで、よく使う機能をショートカットキーにアサインすることで、作業スピードの向上を狙った機能などを紹介してきました。

 今回は、より実践的なエフェクトの使い方や、僕のトラックチェーンなんかを、前編と後編に分けて紹介していきたいと思います。

・まず理解しておきたいこと!

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 その楽器や素材が持つ周波数帯域などを把握してあげることが大事です。低域が元々入っていない音の低域をカットしたり、ブーストしたりしても、元々音が鳴っていない帯域なので意味があまりありません。

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 その音の美味しい部分(どこに周波数が集中しているか)をアナライザーなど使ってキッチリ見極めましょう。

 また、エフェクトをかける前に、パンやボリュームでバランスを作ることを優先に考えましょう。

 例えば「ミックスの低域に迫力がない」なんて状況をよく耳にするのですが

 EQやエフェクトでローを持ち上げるより、単純に低域のトラックのボリュームを上げてあげる方が、結果的に望んだ音に近づくと思います。

・EQ編

 基本的に、周波数をカットしていく使い方をしています。

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 僕の体感だと、持ち上げたい帯域よりも、もっと下をカットすると欲しい部分が前に出てきます。

 ご存知の方も沢山いるかと思いますが、チャンネルEQはバンド毎にカーブを選べます。

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 僕が最近好んで使っているのはチャンネルEQのハイカットモード2で、Qを5~6くらいの狭めのQで超高域はカットしつつハイ上げする設定です。

・コンプレッサー

 「音を圧縮するのがコンプレッサー」とよく耳にしますが、僕は、水が流れているホースを手で掴むイメージを持っています。

 水道から出ている水の量(入力ゲイン)が多くなればホースの出口の水の量も「チョロチョロ」から「ジャバジャバ」と勢いが増しますね。

 その途中のホースを手で握るとホースは狭まり、少ない水量でも出口の水の勢いは増します。

 この”ホースを握ったりする行為”がコンプレッサーになります。

 ホース自体の素材の硬さ(Threshold)、どれくらいの力で握るか(Ratio)、握る手の反応速度(Attack、Release)

 パラメーターのイメージは上記のように考えています。

 コンプレッサーをかけると圧縮されてまとまったように聞こえます。

 ひとつ「枠」を作ってあげるイメージです。

・リバーブ/ディレイ

 広げたり奥に持って行ったり空間を埋めたり……空間系はその名の通り奥が深い!

 昔はマシンパワーが非力だったのでセンドリバーブを使っていましたが、最近はインサーションで挿すことが多いですね。やりすぎは禁物ですが、分かりやすくかかってくれないと意味がない。

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 そうした場合は空間系の後にコンプレッサーやマルチバンドコンプレッサー、サチュレーターなどでリバーブの残響音ごとガッツリ持ち上げて音作りしてしまいます。

 センドで空間系を使用している場合、センドトラックをサイドチェインコンプしても面白いです。

 僕がピアニストのまらしぃ君と組んでいるユニット「maras k」では、レコーディングしたグランドピアノをデジタルな楽曲に乗せるスタイルで活動しています。

 そのときに多用した技で「ピアノのセンドリバーブにサイドチェインコンプ、もしくはサイドチェインゲートを原音のピアノをトリガーにサイドチェインする」と言うのがあります。

 原音がなくなったときにセンドリバーブを持ち上げる(もしくはバッサリ切る)と言う手法です。

 ボーカルにもかなり効果的だと思いますので是非試してみてくださいね。

・モジュレーション

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 コーラス、フランジャー、オートパンはすごくよく使います。

 16分クローズハットやアルペジオをオートパンで左右に散らしてあげると空間が広がって聞こえます。

 LFOはカッチリ周期が合っていてもいいのですが、ランダムに設定してみてもトリッキーで面白いです。

 写真はお気に入りのXfer LFOTool。オートパンにも使いますし、サイドチェインコンプレッサーとしても使っています。超便利!(記事4-写真7.jpg)

 フランジャーとコーラスは滲ませつつ広げるとき、ボーカルなんかにも薄くかけたりします。

 次回後編では、最近主流のプラグインに焦点を当てていこうと思います!

kors k(S2TB Recording)

 音楽プロデューサー、アーティスト、DJ。ハードダンスミュージックを主軸としているものの、カバーしている音楽スタイルに限りはない。ハイクオリティーで斬新な音作りに魅了されるファンが各国に多数存在する。

 「beatmania」を始め、各種リズムゲームのシーンにおいて絶大な人気を誇るトラックメーカー。その傍ら、アニメ関連の楽曲やJ-POPのリミックス、国内外のレーベルからのリリースなどその活躍範囲は広く、トータルで500曲以上におよぶ楽曲群を世に送り出している。teranoidやEagle、StripE、といった名義でも活動。現在はDJとしてクラブやイベントのステージでも活躍しており、国内のみならず北米~アジア各国~ドイツなどでもライブを重ねている。

 自らのレーベル「S2TB Recording」から多数のCDをリリース。遂には2014年6月に、アルバム「Let's Do It Now!!」をリリースしメジャーデビューを果たした。

 音楽制作ソフト「Cubase」、譜面制作ソフト「Dorico」の制作に役立つ様々なTipsをお届け! ぜひフォローしてご活用ください! Creativity First!!