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システム開発を「コンテスト」に変えれば
高い技術を素早く手に入れられる

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第73回】 2017年10月13日
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これからのシステム開発、とりわけデジタルイノベーション案件では、従来のウォーターフォール型(工程を細かく管理して進める方法)の開発プロセスや、SIベンダーによる受託開発のスキームが適合しないものが増えると考えられる。外部依存度の高い国内ユーザー企業には、どのようなソーシング戦略が考えられるのであろうか。

国内企業のシステム開発に関わる課題

 企業のIT部門におけるシステム開発の内製化率は、欧米企業と比べて著しく低く、開発実務の大部分を外部ベンダーに依存している。また、多くの大企業では情報システム子会社を擁しているが、実務を担うはずの情報システム子会社においても技術の空洞化が進んでいるという実態を見逃せない。

 本連載第71回「イノベーションに求められる人材像」(http://diamond.jp/articles/-/139629)では、イノベーションを担う3つのタイプの人材像の中で、国内企業のIT部門ではデザイナー・タイプの人材が最も不足していると述べた。しかし、不足しているのはそれだけではない。ベンダー依存度が高く内製化率の低いIT部門では、デベロッパー・タイプの人材も大きく不足している。適用可能な技術を的確に評価・選定したり、迅速にプロトタイプを作成し、継続的に改善したりするといった局面においても外部に頼らざるを得ないという企業は少なくないだろう。

 従来の基幹系業務システムのようなSoR(Systems of Record)に関わる案件であれば、企画および要件定義をインソースで行い、設計・開発・運用などの実務を外部のITベンダーに委託するという分業のスキームが可能であった。しかし、昨今のIoT(Internet of Things)やビッグデータを活用したイノベーション案件やデジタルビジネス創出のためのシステム開発案件は、SoE(Systems of Engagement)の特徴を持っており、ビジネス環境や構成要素の関係性は常に変化するため、事前の定義よりも変化に対する即応性が重視される。アイデアと実装を短いサイクルで回し、段階的にイノベーションを実現していく協業のスキームが必要となり、明確な分業が困難な案件となることが多い。

 それでは、情報システム子会社や従来のSIベンダーがこうしたニーズに応えられるだろうか。準委任契約という選択肢は残るものの、現時点において、OSS(Open Source Software)やAPI(Application Programming Interface)の活用、最新のツールやPaaS環境、DevOps、アジャイル型のプロジェクト推進、継続的インテグレーションなど、SoE案件の開発に有効と考えられている手法や開発環境に対応できるSIベンダーは非常に少ない。外部に依存せざるを得ないにもかかわらず、外部にそれが求められないというジレンマが、企業のデジタルイノベーションの推進に立ちはだかっている。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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