ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
グローバル競争を勝ち抜く組織人材戦略

AI時代に求められる人材の要件

大西 俊介
【第2回】 2017年10月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
4

 ただし、実ビジネスの世界に住む自分の観点から、STEM人材に関連しては、コメントしておくべきことが1つあります。それは社会科学の領域においても。特に経済学などにおいては、統計理論が必要とされるということです。ですから文系人材、理系人材といった単純な切り分けでなく、“数学や化学の素養を有した”という修飾語の付く「ハイブリッド人材」が重要なのです。

 企業経営においても、数字の読解力は経営者に求められる能力のひとつになってきています。官僚的な経営企画部にグラフにしてもらえればよかった時代は終わっているのです。

 さらに実社会において活用する能力や発想力を有する人材が必要とされるのです。そしてこの発想力は、「人間力」や「芸術性」に大きく関係します。

発想力と芸術性=感動させる力

 コンサルタントをやっていた頃、アーティスティックなプレゼンテーション(見た目だけはなく)を作るコンサルタントは「右脳派人材」と読んだりしたことがありました。

 こういったコンサルタントと付き合っていると、芸術性は確かに素晴らしい能力ですが、逆に遺伝的ではないように感じることが多くありました。

 ですから後天的に習得することが難しい芸術性は「感動させる力」に置き換えて考えるといいのではないかと思います。

 十数年ほど前、私とよく仕事をともにしたコンサルタントは非常に優秀で、多くのファン(顧客)をもっていました。彼の口癖が「感動させられるプロフェッショナルになりたい」でした。感動の秘訣はいろいろありますが、オーディエンス(顧客)の気持ちや思いが理解できていることです。その上でどこまで、阿るかというところの、さじ加減が感動の大きさや深さにつながっていきます。

 このことを因数分解すると「コミュニケーション力」+「顧客志向」に関係づけられます。

 できるな、と思うコンサルタントは、感覚的に相手の感情や意図するところを理解し、読み取る力が優れているのです。非常に根っこのところの能力ですが、完全に先天的ではないのですが、育てるのが難しい領域でした。これには性格的な要素も絡んでいるからだと思います。

 ですから感動させる力は人としての力(=人間力)に大きく関連していると思います。ビジョンを描き、伝え、やりきり、相手を思いやる、そんなことがこの領域には含まれています。前会社の社長時代、将来を担う可能性のある若手社員の塾をやっていて、最も伝えたかったのはこの人間力でした。人間力を持たないSTEM人材は、ただの独りよがりに過ぎないですし、顧客を感動させることはできないと思います。(驚かせることはできるかもしれませんが。)

 そしてこの人間力についてはもう少し稿を割きたいと思います。普遍的なテーマですが、「“あの人の背中を追いかけたい”という上司が周囲にいない」などの意見をよく聞きますね。現在の日本のビジネスマンが失いつつある最も根本的な能力の1つであり、また求められる観点も、外部環境の変化に伴い、少しずつ変わってきているように感じています。

 次回はこのあたりにフォーカスして、求められる「人材」を総括したいと考えています。

previous page
4
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

大西 俊介
[インフォシスリミテッド 日本代表]

おおにし・しゅんすけ/1986年、一橋大学経済学部卒業後、同年日本電信電話株式会社に入社、株式会社NTTデータ、外資系コンサルティング会社等を経て、2013年6月より、株式会社NTTデータ グローバルソリューションズの代表取締役に就任。通信・ITサービス、製造業界を中心に、海外ビジネス再編、クロスボーダーな経営統合、経営レベルのグローバルプログラムの解決等、グローバル企業や日本企業の経営戦略や多文化・多言語の環境下での経営課題解決について、数多くのコンサルティング・プロジェクトを手掛ける。NTTデータグループの日本におけるSAP事業のコアカンパニーの代表として、事業拡大に貢献した。SAP2017年1月1日、インフォシスリミテッド日本代表に就任。著書に「グローバル競争を勝ち抜くプラットフォーム戦略」(幻冬舎)等がある。

グローバル競争を勝ち抜く組織人材戦略

グローバル化とその揺り戻しともいえる保護主義が錯綜する世界のビジネス環境。そこで生き残る企業の条件を、外資系IT企業日本代表の立場で論考する。

「グローバル競争を勝ち抜く組織人材戦略」

⇒バックナンバー一覧