日本の文部科学省に当たる中国の教育部が公表した統計データーによれば、2016年、海外留学に行った中国人留学生は54万4500人で、2015年より2万800人増、率にして3.97%増加している。だが、これと帰国した中国人留学生とを比べると、帰国した方が1.7%上回っているのだ。

 こうしたデータを見て、中国国内では「ついに中国の人材流失現象に終止符が打たれた」と喜ぶ声もある。だが専門家の間では、留学期間を考慮し、3年前ないし4年前に出国した留学生数と比較すべきだという考え方が主流をなしている。つまり、2013年の出国者数と2016年の帰国者数とを比較すべきだというわけだ。ただ、そうした比較をしても2011年からは帰国者数の方が多く、人材の“黒字化現象”が続いているという。

中国政府が苦々しく思っていた
門戸開放に伴う人材の海外流出

 中国政府は、「門戸開放」の象徴でもある人材の海外流出を、時に苦々しく思っていた経緯がある。

 1970年代の後半、文化大革命が終結し、改革・開放路線を進めた中国では、四つの近代化の実現が最大の課題とされていた。しかし、近代化の実現には、進んだ外国の技術を理解できる大量な人材が必要だ。

 このような人材を養成するため、中国政府は80年代に入ってから米国、日本、ドイツといった国々に、多くの留学生を国費で派遣し始めた。数年後には、外国で先進的な技術を身につけた留学生たちが中国に戻り、中国の近代化を速めてくれるだろうという狙いがあったのだ。

 こうした形で外国に派遣された留学生は「国費留学生」と呼ばれ、そのほとんどが厳しい選抜をくぐり抜けたエリートたちであり、中国にとっては貴重な人材である。さらに1986年には、個人で海外へ渡航することも認め、出国の規制が大幅に緩和された。そうした緩和を利用して現れたのは私費留学生、つまり自ら渡航費や学費などを負担して留学する人たちである。