木村泰司(きむら・たいじ)
西洋美術史家
1966年生まれ。米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を修めた後、ロンドンサザビーズの美術教養講座にてWORKS OF ART修了。ロンドンでは、歴史的なアート、インテリア、食器等本物に触れながら学ぶ。東京・名古屋・大阪と、企業や自治体向けに年間100回ほどの講演・セミナーを行っている。『名画の言い分』『巨匠たちの迷宮』『印象派という革命』(以上集英社)、『名画は嘘をつく1~3』『名画の謎解き』(以上大和書房)、『美女たちの西洋美術史 肖像画は語る』(光文社)、『西洋美術史を変えた名画150』(辰巳出版)など、著書多数。

『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』
著者からのメッセージ

 私は、いつも講演で「美術は見るものではなく読むもの」と伝えています。美術史を振り返っても、西洋美術は伝統的に知性と理性に訴えることを是としてきました。古代から信仰の対象でもあった西洋美術は、見るだけでなく「読む」という、ある一定のメッセージを伝えるための手段として発展してきたのです。つまり、それぞれの時代の政治、宗教、哲学、風習、価値観などが造形的に形になったものが美術品であり建築なのです。それらの背景を理解することは、当然、グローバル社会でのコミュニケーションに必須だと言えます。

 一方の日本では、美術史というジャンルの学問が世間で認知および浸透していないのが現状です。それにもかかわらず、日本は非常に展覧会に恵まれています。とくに東京では年中展覧会が開かれており、海外の美術館が所蔵する一級の作品も来日を果たします。

 しかし、それをただ鑑賞するだけで終わることが多く、それはまるでわからない外国語の映画を字幕なしに観ているのと同じだと言えるでしょう。欧米の美術館を訪れた方なら目撃したこともあるかもしれませんが、欧米では小さな子どもたちでさえ学芸員や引率する先生に教わりながら美術品を鑑賞します。自分勝手に鑑賞するだけでは、当然、学べる点が少ないからです。

 残念なことに日本ではこのような美術教育が施されていません。このような状況からも、日本と世界の差を実感してしまいます。美術(それすなわち美術史)に対して造詣がないことは、むしろ恥ずかしいことであるという認識が日本ではなさすぎるのです。

 拙著『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』では、一人でも多くの方に、馴染みのない美術史を身につけてもらえるよう、西洋美術史約2500年分のうち必要最低限の知識を1冊に凝縮しました。ただの美術品の説明ではなく、背景にある歴史や事件、文化・価値観など、「教養」としての美術史が学べるように心して記したつもりです。

 世界のエリートたちが身につけている知識を得られることはもちろん、歴史的な背景を踏まえ、美術史という概念および知識を念頭に置くことで、美術鑑賞や社交の場においても、より世界が大きく開かれていくことでしょう。ぜひ、本書で「世界」への扉を開いてみてください。


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』

『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(木村泰司著、ダイヤモンド社刊、定価1600円+税)

アルカイック/クラシック/ヘレニズム/ローマ美術/ロマネスク/ゴシック/ルネサンス/北方ルネサンス/ヴェネツィア派/バロック/オランダ絵画/フランス古典主義/ロココ/新古典主義/ロマン主義/レアリスム/イギリス美術/バルビゾン派/印象派……
約2500年分の西洋美術史が一気にわかる!!

◎なぜ、古代の彫像はすべて裸だったのか?
◎有名な建築様式「ゴシック建築」に隠された、当時のフランスの政治的なメッセージとは?
◎フランスが美術大国になれた理由
◎ナポレオンが自身のイメージ戦略に利用した絵画様式とは?
◎なぜ印象派は、受け入れられなかったのか?

美術の裏側にある、欧米の歴史、価値観、文化を読み解く。
美術の見方が変わる、グローバルスタンダードの教養が身につく。
これ一冊で、名画の背景を語れるようになる!

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【目次】
■はじめに  美術史とは、世界のエリートの「共通言語」である
■第1部  「神」中心の価値観はどのように生まれたのか? 
■第2部  絵画に表れるヨーロッパ都市経済の発展 
■第3部  フランスが美術大国になれた理由
■第4部  近代社会はどう文化を変えたのか?