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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

大胆で単純な奈良市議会の「議長ポスト買収工作」
規範意識を失った地方議会で改革気運は盛り上がるか

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第35回】 2011年10月24日
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選良による選良たちへの不正行為
奈良市議会での「議長ポスト買収工作」

 そこまでして死守したかったのには、何か特別な理由があるのだろう。そう思わざるを得ない。もちろん、選良ではない一般人には言えない類の理由である。

 奈良市議会でまさかと思うような不祥事が発覚した。市議会議長ポストを巡る買収工作で、関係者は全員、有権者から選ばれた市議。つまり、選良による選良たちへの不正行為である。

 手口は大胆で、かつ、驚くほど単純だった。あからさまな行動は規範意識の欠如を示していた。本人たちは犯罪行為との認識すらなかったのかもしれない。

 事件は今年6月、奈良市議会(定数39人。現在欠員1名)の議長選挙直前に起きた。前議長が無所属の市議に白票(棄権票)を投じるよう依頼し、見返りとして現金20万円やコメ5年分の提供を持ちかけた。

 自らが率いる最大会派(8人、現在7人)内の議長候補を当選させるための工作だった。賄賂を申し込まれた市議は、前議長とのやり取りをスマートフォンで密かに録音していた。動かぬ証拠を突きつけられた前議長は9月2日、買収行為を認め議員辞職した。

 一方、無所属市議から告発を受けた大阪地検特捜部は9月15日、賄賂申し込み容疑で市議会議長室などを家宅捜索し、捜査に乗り出した。

 議長選を巡る不正工作はこれだけではなかった。その後、前副議長による買収疑惑も浮上した。無所属ながら最大会派内の実力者ときわめて近かった前副議長は、別の無所属市議に近づいて白票(棄権票)を依頼した。その見返りとして、議会の委員長ポストや次回市議選での支援などをもちかけたという。

 賄賂工作を受けた無所属市議が記者会見で詳細を明らかにしたが、密室での2人のやりとりである。前副議長も記者会見を開き、事実無根と全面否定した。

 6月の奈良市議会の議長選は異例づくめの展開となった。奈良市議会では無記名投票による互選で議長を選び、1年交代が慣例となっていた。選挙とはいえ立候補制ではなく、当選者は会派間の事前調整(日本共産党除く)で事実上、確定していた。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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