時流を見極める観点4 技術革新
その技術は何を実現させるのか?

 テクノロジーは、事業機会の本命である。本質的なものも表面的なものも含め、さまざまな技術革新が事業創造の機会を作る。ビッグデータ、IoT、ロボティクス、ディープ・ラーニング(人工知能の技術)、ブロックチェーン、ドローン、DNA解析、先端医療検査など、バズワーズも含めて枚挙に暇がない。

 技術革新を事業機会とするには2つのポイントがある。1つは、その技術革新の本質を見抜くことである。例えば、ビッグデータ、IoT、ディープ・ラーニング、ロボティクスの4つの本質はどこにあるのだろうか。この4つの関係を整理すると図2のようになる。

儲かるビジネスは<br />「脳」と「心臓」を握る図2 技術革新の関係図

 ビックデータとは、膨大で複雑な情報の集積物のこと。統計処理をすることで最適解を導くことができる。IoTとは、センサーなどの「モノ」をインターネットでつなぎ、ネットワーク化すること。ビッグデータのもとになる情報を取るための起点が空間的に増えるということがIoTの本質である。

 ある時点だけの情報を使うのでなく、何度も仮説検証して学ばせ、それぞれの時点での最適解を導き出そうとするのがディープ・ラーニング(人工知能が学習する方法の1つ)。学んだあとに駆動するしくみがロボティクス(ロボット工学)。このように捉えれば四者の関係が見えてくる。

 言葉の表面にとらわれず、技術の本質的価値を見抜くには、明確な定義を見つけることだ。それぞれはバラバラに存在するのではなく、有機的な関係を持って進化しているのである。

 技術革新を事業創造に取り入れるときの2つ目のポイントは、視点を「顧客に求められること」に向けることである。「事業を創る」とは「顧客を創る」と同義だ。ビジネスでは、顧客のニーズに適合しないプロダクトは無益で無価値である。

 たとえば、ロボットエンジニアは、無意識にロボットを人間に近づけようとする。ところが顧客は本当にそれを望んでいるとは限らない。ロボット技術を考えるとき、それがファンクショナル(機能的)なのか、ファミリア(親和的)なのかの二軸でとらえると便利だ図3)。一見便利そうに見えるロボットなのに実際に使ってみると期待ハズレだったり、親和性を追求させるためペットロボットに無理やりコミュニケーションをさせようとした結果、かえって気持ち悪く映ったりすることがある。

儲かるビジネスは<br />「脳」と「心臓」を握る図3 ロボットの機能性・親密性による評価
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 不細工でも有能だったり、AIを使って話すことはできないが仕草がかわいかったりするロボットのほうがユーザーに好まれ、事業的に成功することもある。技術を主軸に事業を組み立てるときに、「技術的にできること」を追求するあまり、「顧客に求められること」を見失う危険が強い。これが注意するべき2つ目のポイントである。