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もし妻が乳がんになったら、配偶者にはどんな影響があるか

井手ゆきえ [医学ライター]
【第362回】

 今月はピンクリボン月間──乳がん啓発月間だ。

 日本の女性は40歳未満の若年成人と60歳未満の閉経前に発症のピークがある。乳がんは現役世代を直撃するのだ。万が一、妻が乳がんに罹患したら配偶者にどんな影響があるのだろう。

 2014年、厚生労働省・がん臨床研究事業の一環として、乳がん患者の配偶者が感じている「困難」を明らかにすることを目的に調査が行われた。対象は妻が乳がんと診断され、治療後6年以内である男性368人だった。

 インターネット調査(期間:09年11~12月)に回答した男性の年齢は、50代が35.4%、40代が34.8%と、40~50代が7割を占めた。子どもがいる夫婦は8割以上だった。また、乳がん患者(妻)の9割以上が乳房全摘もしくは温存手術を受けており、6割以上が抗がん剤治療、放射線療法を受けていた。

 質問の結果、配偶者は「何をサポートすればいいかわからない」「どう接すればいいかわからない」「妻の気持ちがわからない」と「妻ががん」という状況に困惑している様子が認められた。

 診断直後に限ると半数以上が、診断から数年が過ぎた時点でも1~3割が困惑を引きずっている。

 特に(1)配偶者の年齢が若い、(2)抗がん剤治療中、あるいは再発など患者の状態が悪い、(3)自分自身ががんに罹患した経験がある、などの条件で「困難」を感じやすい。若い夫婦は幼い子どもがいる可能性が高いため、将来や経済面の不安が強く、妻・母の死を恐れる、などの理由が考えられる。

 また、困難感が強い配偶者は、情報の提供や相談など社会的サポートを強く求めていることも示された。研究者は、「配偶者をいかに社会的サポートにつなげるか検討が必要」だという。

 先行研究では、がん患者の配偶者が自身の不安を否定する「回避行動」や、不安が高じて「過干渉行動」をとると、双方の心身に悪影響があることがわかっている。

 早期乳がんの5年生存率が90%を超える今、配偶者も「がんとの共存」を冷静に受け入れる必要があるのだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 


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