[トロント 11日 ロイター] - 資産バブルを懸念する世界の主要中央銀行にとっては、カナダ銀行(中央銀行)のやり方が参考になるかもしれない。カナダ中銀は、物価上昇率が目標の2%を下回っているにもかかわらず、住宅市場の過熱を抑えるために利上げに動いているのだ。

米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、日銀はいずれもカナダ中銀と同様に物価目標を採用して金融政策を運営している。ただ、あまりにも物価動向だけに目を向け過ぎると、金融や住宅のバブルを醸成し、超低金利を続けてやっと手に入れた景気回復を台無しにしかねない。

カナダの場合、家計債務が過去最大規模に膨れ上がっていて負のショックに対して経済がもろい状況にあり、こうした問題と物価低迷の折り合いを付ける必要があった。そして中銀は、今後成長が加速して来年半ばには物価上昇率が目標に達するとの見通しを信じ、7月以降2回の利上げを断行した。対照的にFRBは、年内に追加利上げするかどうかまだ逡巡している。

実際、カナダ中銀の利上げは、オンタリオ州政府の政策措置と相まって住宅市場を落ち着かせた。

元モルガン・スタンレーのエコノミストでイェール大学ジャクソン・インスティテュート・オブ・グローバル・アフェアズの上級研究員、スティーブン・ローチ氏は「これは金融安定を巡る懸念に基づいて行動している責任ある中銀としての1つの重要な例だ。物価上昇率がまだ低いというだけで危機モードの政策を維持している中銀は、自ら災いを招いている」と指摘した。

金融が不安定化していることについて中銀が責められるのは、調達コストの安い資金を供給して資産価格押し上げを助長している面があるからだ。

カナダ中銀も2015年に既に低かった金利をさらに下げた局面では、住宅バブルを後押ししているとの批判を浴びた。そして利上げが住宅バブルを退治できたかどうか判断するのはまだ早いものの、カナダの金融株が最高値で推移している点からすると、一部の投資家はソフトランディングを見込んでいることがうかがえる。

<視野狭窄>

各国とも成長は上向いてきた。だが日銀やECBなどは依然として資産買い入れを継続し、弱含みで推移している物価上昇率を最終的に目標まで押し上げようとしている。オーストラリア準備銀行(中銀)は、カナダ以上に家計債務が多いのに、政策金利を過去最低水準にとどめたままだ。

主要中銀の言い分では、金融安定リスクに対処するには効き目が鈍い金利政策よりも、資本基準引き上げなどのマクロプルーデンシャル政策の方が適切となる。一方で物価上昇率が目標を下回っているので、追加的な緩和が必要だという。

しかしアバディーン・スタンダード・インベストメンツのシニア投資マネジャー、ジェームズ・アセイ氏は「(物価上昇率を)1.5%から2%にしようとする金融政策を強く推し進めるのは危険で無責任だ。過去に世界的な金融危機をもたらしたような不均衡や過剰債務を形成する方向に大きく寄与するように金融政策が設定されている中で、物価動向に注目するのは視野が狭い」と苦言を呈している。

40年前にジョージ・ソロス氏とともにクオンタム・ファンドを創設したことで知られるジム・ロジャース氏は「主要中銀が(金利を)低く抑えているのは理不尽だ。われわれすべてが高い代償を支払うことになる」と警鐘を鳴らした。

(Fergal Smith記者)