カメラマンに必要で大切なスキル

――現場に同行したことが今の公文さんの仕事ぶりに活かされているんですね。

公文 山口さんについて一番勉強になったことは、カメラマンに必要なスキルのうち大切なものの一つが「コミュニケーション」であるということです。カメラマンにはもちろん綺麗に撮る技術も必要ですが、それ以前に。僕は一番重要だと思っています。

 場の雰囲気をつくるのもカメラマンの仕事。いわゆる名刺を渡してというビジネス的なコミュニケーションではなく、被写体が居心地良くいられるような場を作れなければいけないのではないかと思っています。現場にはデザイナーさんや編集者さん、ディレクターさんなどがいらっしゃいますが、カメラマンは現場にいる人の中でも立ち位置が少し異なっていて、被写体の方とより直接的なコミュニケーションをとる必要があるんです。相手がどんな大物だったり有名人だとしても、おじけづかずに自分なりの雰囲気をつくる。その大切さを山口さんの現場で教えていただきました。その経験は、『外資系トップの仕事力』でも活きました。

綺麗に撮ることよりも大切なスキルがある<br />カメラマン 公文健太郎(前編)

――ダイヤモンド社で一番初めに撮影していただいた書籍ですね。タイトル通り、外資系企業の経営者を撮影していただきました。

公文 めちゃくちゃ緊張しました。最初の撮影がグレン・S・フクシマさん(当時エアバス・ジャパンCEO)で、場所は六本木ヒルズのオフィスで。オーラに呑まれそうになりました。そんなときに「おじけづかずに現場を仕切り、雰囲気をつくること」の大切さを改めて強く意識しました。もちろんその頃は周りの人に助けられてばかりでしたが。

綺麗に撮ることよりも大切なスキルがある<br />カメラマン 公文健太郎(前編)

 少しずつ慣れていったこともありますが、経営者の皆さんの魅力に惹かれたというか、僕自身もすごく充実した仕事ができました。実は、もともとあの本の話をいただいたときはおひとり当たり1~2カットとか、そういうリクエストだったんです。でも、たくさん使っていただけた。うれしかったですね。一生懸命撮影して、一枚一枚手焼きした甲斐がありました(笑)。

今回は公文さんへのインタビューであり、写真もこちらが撮らせていただいたのですが、本当に気さくに場を盛り上げていただきました。これが現場に入ったときのコミュニケーションなんだなと実感しました。後編では、さらに具体的な書名を挙げて、撮影時のエピソードなどをうかがっていきます。

公文健太郎(くもん けんたろう)
写真家。1981年生まれ。雑誌、書籍、広告でカメラマンとして活動しながら、国内外で作品制作中。写真集に『大地の花』(東方出版)、『BANEPA』(青弓社)、フォトエッセイに『だいすきなもの』『ゴマの洋品店』(ともに偕成社)、写真絵本に『だいすきなもの』(偕成社)がある。
http://www.k-kumon.net