Matt Spetalnick and Mike Stone

[ワシントン 11日 ロイター] - 「バイ・アメリカン」を標榜するトランプ政権は、米国製の軍用無人機(ドローン)を海外に売りやすくして、この分野で急成長する中国やイスラエルに対抗できるよう、新たな政策準備を完了しつつある、と複数の米高官が明らかにした。

大統領の側近は、選ばれた同盟国向けのドローン販売に関する国内規制緩和に着手すると同時に、1987年の「ミサイル技術管理レジーム(MTCR)」の再交渉を求めることで、米国製ドローン輸出を巡る国際規制の緩和を目指している、と政府や業界関係者は語った。

中東や南アジアなど紛争地域の不安定化に拍車をかけるリスクがあると人権運動家が警鐘を鳴らすなか、米政権は、国内メーカーからの強い要請を受け、ドローン輸出政策の見直しを進めている。

こうした変化は、米国の武器輸出手続きを全面的に見直す取り組みの一環であり、年内にも大統領令が発令される可能性があると、複数の政権当局者は匿名でロイターに明らかにした。

対テロ戦略の中核をなす遠隔操作可能なドローンの先駆者である米ドローンメーカーが、より緩やかな規制の下で中国やイスラエルが販売する海外市場において、シェアを取り戻すよう後押しすることが狙いだ。

輸出規制の緩和によって、大量の雇用を簡単に創出できるだろうが、実際に具体化するのはまだ先の話だと、米航空宇宙産業協会(AIA)のレミー・ネイサン氏は語る。

恩恵を受けるのは主に、非上場のゼネラル・アトミックスやボーイング<BA.N>、ノースロップ・グラマン<NOC.N>やテキストロン<TXT.N>、ロッキード・マーチン<LMT.N>など、米国のドローン製造大手だ。

「かつて経験したことのない方法で、ゲームに参加できるようになる」と、ある米高官は述べた。

<「バイ・アメリカン」戦略>

特に、情報収集や監視、偵察用の非武装ドローンの販売規制が緩和されるとみられている。こうした最も高性能なドローンは、戦闘機や海軍艦船、地上発射装置によるミサイル発射を援護するため、高解像度カメラやレーザー目標指示装置を搭載している。

だが、「プレデター」や「リーパー」のようなミサイル搭載可能なドローンに関する輸出規制の緩和は、さらに慎重さを要し複雑だ。現代戦争を様変わりさせた攻撃能力を有する「ハンターキラー」ドローンの需要は一段と増しており、米国モデルは最先端と見なされている。

こうした動きは、米産業を押し上げるためにトランプ大統領が推進する「バイ・アメリカン」戦略の一環であるだけでなく、同盟国に対する影響力を行使する方法として米政権が考えている武器販売を容易にしようとする意向を反映するものだと、前出の米高官は言う。

新規制の草案によれば、機密リストに記載された2桁の国々はより迅速な軍用ドローン購入を許される、ともう1人の米高官は明かした。業界筋によると、そのなかには、米国に最も近い北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部や、「ファイブ・アイズ」と呼ばれる情報ネットワークを米国と共に構成する英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが含まれている。

米国の輸出規制が寛容になり過ぎれば、人権意識の低い国に「自国民を標的」にするさらなる手段を与えかねないと、米研究機関「スティムソン・センター」のレイチェル・ストール氏は指摘する。

オバマ前米大統領は2015年、軍用ドローン輸出政策を見直したが、主要ライバルである中国やイスラエルと比べ、それでもまだ厳し過ぎるとメーカーから不満が上がった。

米国のドローンメーカーは、世界の軍用ドローン市場でのシェア拡大を狙っている。規則変更を考慮せずとも、米メーカーの売り上げは2016年の28億ドル(約3140億円)から2025年には94億ドル(約1兆円)に増加すると、調査会社ティール・グループは予想している。

軍用ドローン製造の最大手ゼネラル・アトミックスのリンデン・ブルー最高経営責任者(CEO)が最近、ロビー活動のためにホワイトハウスを訪れたと、事情に詳しい人物は明かした。

新規則では、軍用ドローン販売の大半で長いあいだ障壁となってきた「推定却下」を正式に再解釈することになるとみられる。そうなれば、より容易かつ迅速に承認を得られるようになる。

米国製の武装ドローン購入を許されていたのは英国のみだったが、最近これにイタリアが加わった。

20億ドル規模のゼネラル・アトミックス製偵察ドローン「ガーディアン」をインドに売却する計画は、今年6月ようやく米国の認可が下りた。だが、武装ドローンの購入を巡るインドの要請は滞っている。

最も強力な米国製ドローン販売の拡大を阻む大きなハードルは、ミサイル売却などを規制するため、米国のほか34カ国が署名し1987年に発足した協定「ミサイル技術管理レジーム(MTCR)」だ。

同協定は、航続距離300キロ以上、最大積載量500キロ超のドローンを巡航ミサイルに分類しており、極めて厳格な輸出入規制を義務付けている。したがって、米国製品の輸出規制を緩和することに国際的な承認を得るためには、MTCRの再交渉が不可欠となる。

ある米当局者と業界筋によれば、アイルランドの首都ダブリンで来週開催されるMTCRの年次総会に出席する米国務省当局者は、MTCR発足当時には存在しなかったドローン販売について、ミサイル技術よりも寛大に扱うことを提案する「ディスカッションペーパー」を発表する予定だという。

合意が得られるという保証は全くない。NATO加盟国と国境を接するロシアはそのような変更に抵抗する可能性があると、この米当局者は語った。

<中国とイスラエル>

MTCRに参加していない中国は、イラクやサウジアラビア、ナイジェリアといった米国と近い関係にある一部の国々に向けドローン販売を推進しようとしているが、米国の規制網に阻まれている。

中国製ドローン「彩虹3号」や「彩虹4号」は米国のリーパーと比較されるが、もっと安価だ。中国は自国製ドローンをほぼ無条件で売っていると、複数の米当局者は言う。

中国外務省は、軍用ドローンの輸出に関して「慎重かつ責任ある態度」で臨んでいると主張している。

一方、MTCRに参加してはいないものの、順守するとしているイスラエルは、その技術力の高さから、米国メーカーの競合相手となっている。しかし、不安定な状況にある中東の近隣諸国には販売しないとしている。イスラエル国防省のデータによると、同国は2016年に5億2500万ドル規模のドローンを輸出した。

米ドローンメーカーや政権内部の擁護派は、他国がドローンの販売拡大に向けて急速に動くなか、後れを取るべきではないと主張している。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)