現代は不確実性が高く、企業は効率化を追求するだけでなく、「変化する速さ」も求められるようになった。しかし、その変化にも様々な側面がある。今回は、時間優位を構築する上で欠かせない、変化を捉える4つの切り口について考える。
※全3回連載[第1回][第3回]
時間優位構築の4つの切り口
第1回では、企業が、「適切なタイミング」で「適切に変わる」ために参考になる、ダイナミック・ケイパビリティ論を紹介した。ダイナミック・ケイパビリティは「変わる」ことに主眼を置いた理論で、センシング(Sensing:感知)・シージング(Seizing:捕捉)・トランスフォーミング(Transforming:変革)の枠組み(ここでは、SSTと呼ぶ)で捉えられる。
このSSTとPDCAを組み合わせて、「時間優位の競争戦略」を語る際には、「変化」がポイントとなる。なぜなら、時間優位の競争戦略とは、組織の時間感度を高め、迅速に自己革新を行う戦略に他ならないからである。環境変化に合わせて企業が適切に変わっていくことが、競争優位を担保してくれる。そこで今回は、「変化」について論じよう。
変化を実際の行動の中で捉えようとすると、「早さ」と「速さ」という視点が見えてくる。「早さ」は、時間軸上の一点を指し、その一点がどこにあるかということが問題になる。つまり、タイミングが早いか遅いかである。そのタイミングには2種類あり、「備え」のタイミングと、「変革」のタイミングである。
「速さ」とは単位時間あたりの変化量である。その大小が議論の対象になる。この速さにも2種類ある。一つ目は連続的・漸進的な「進化」の速さである。二つ目は変革における「転身」の速さだ。これは、変化の変化スピードとも言えるだろう。時間優位の構築に向けた変化の機会は、これら4つの切り口で捉えることができる(図5)