最短30秒、限られた時間で撮る

――『外資系トップ』シリーズならではといったところでしょうか。

瞬発と継続をファインダー越しに<br />カメラマン 公文健太郎(後編)

公文 このシリーズとは別ですが、同じように経営者の方々のインタビューをまとめた『ぶれない経営』の撮影も、やはり皆さんお忙しい方ばかりなので、時間と場所に制約が多いケースが多々ありました。インタビュー中のカットは良いのですが、ポートレートは特に。ただ、そんな中でも、瞬発的に考えて、そこにあるものを最大限活用して、撮りたい写真を撮るように心がけています。時間がない中でも、妥協することは相手に対して失礼ですし、必要があればお願いをして撮り直しました。

――短時間で構図を決めて撮るというのは難しいというか、勇気がいりますよね。

公文 実は、30秒ほどで撮ったこともあります。隂山英男さん監修の『隂山手帳2008』(※編集部注:リンクは2012年版です)の帯に使われた写真です。ご多忙な隂山先生を撮影するには、限られたスケジュールの中で「他の媒体の取材の合間に」というタイミングしかなかったんです。あらかじめ探しておいた場所に先生が立たれることをイメージとしながら編集者さんと二人で先生をお待ちしていました。そしていらした瞬間に「先生、こちらで!」という、そういう状況でした。『隂山手帳』はその後も年度版で刊行されていて、ずっと撮影させていただいていますが、あの一番初めの30秒で撮った写真は、特に気に入っています。

――刊行当時に写真を見て、「すごくいいな」と思ったことを覚えています。そんな裏話があったとは驚きました。

公文 他に印象に残っているのは、村上憲郎さんの『村上式シンプル英語勉強法』です。これは時間ということではないのですが、グーグル本社の副社長兼日本法人の社長を務めた村上さんの書籍だけに、「グーグルのイメージをつくろう」ということで、ロゴのカラフルさを写真でも表現できればと考え、バランスボールの色を使って撮影しました。

瞬発と継続をファインダー越しに<br />カメラマン 公文健太郎(後編)

 これは私事なのですが、実家に帰った際、母がこの本を持っていたんです。これまでにも僕が撮影したことを知っていて、雑誌などを買ってくれたことはあったのですが、まったく知らずに買っていたんですね。うれしかったのと同時に、なんとなくビジネスマンが買うものと思っていた本が広く読まれていることを知り、あらためてやりがいを感じました。