作品としての写真、
仕事としての写真

――たくさんのエピソードをありがとうございます。さて、公文さんと言えば、カメラマンになるきっかけともなったネパールでの撮影をライフワークとされています。

公文 これまでに4冊、ネパールで撮影した作品をまとめた書籍を出版させていただきました。僕はネパールのチャウコットという小さな村に13年間通い続けています。昨年刊行した『ゴマの洋品店』は、村で出会ったゴマという女性を撮り続けた作品です。これは、これまでの仕事のひとつの区切りになりました。

 ネパールのような発展途上国で、情勢が変化し価値観が変化する中、一番翻弄されるのは女性、特に同年代の女の子たちなんです。価値観という意味では都市部に近い周辺農村の女性が一番苦悩を抱えています。情報がある程度入ってくるだけに、「恋愛して結婚したい」「自立した女性になりたい」という思いを持つ一方、古来の考え方を持った親の意向にも沿わなければならない。夢を持つことはできても叶えることができない社会、そういう中で生きているんですよね。

――今後も撮り続けていかれるんですね。

公文 彼女たちがどんな人生を送っていくのか、これからもずっと追っていきたいなと思っています。50年とか本当に長いスパンで撮り続けたいですね。そして、こういうライフワークと呼べるものにはどんどん挑戦して行きたいですね。今構想しているのはポートレートのシリーズです。あと5年ほど撮り貯めて作品集にできたらいいなと思っています。

瞬発と継続をファインダー越しに<br />カメラマン 公文健太郎(後編)

 でも、自分の作品だけをやっていきたいわけではありません。著名な経営者の方に会えたり、地方の元気なおばあちゃんに会えたりする仕事は刺激的で、また自分の作品にもとても良い影響を与えてくれます。仕事としての写真、作品としての写真、両方を高めていくことがこれからの目標です。

 

公文さんの柔軟な発想と確固とした信念、その両方を垣間見ることができたインタビューとなりました。今後も活躍の幅を広げていただきたいと思います。公文さん、ありがとうございました。

公文健太郎(くもん けんたろう)
写真家。1981年生まれ。雑誌、書籍、広告でカメラマンとして活動しながら、国内外で作品制作中。写真集に『大地の花』(東方出版)、『BANEPA』(青弓社)、フォトエッセイに『ゴマの洋品店』(偕成社)、写真絵本に『だいすきなもの』(偕成社)がある。
http://www.k-kumon.net