トラクターのインターネット

 データ駆動型ビジネスモデルの黎明期とはいえ、海外では日本市場に影響を及ぼす可能性のある興味深い動向がいくつか見られます。

 その一つは、John Deereが実践する創意に富んだビジネスモデルです。John Deereは米国最大の農業機械企業で、ほとんどの米国人が緑色と黄色のトラクターはすぐに同社製のものとわかります。John Deereは2015年に大胆なデジタル変革戦略に着手し、自社のビジネスモデルにデータを取り入れ始めました。同社は現在、自社製の車両に3G/4Gの接続機能を組み込み、米国全体にわたって農機の作業状況に関するデータを収集しています。

 John Deereのビジョンは、このデータを集約して分析し、第三者に販売できるようにすることです。同社のデータサイエンティストは、米国で作付けされたトウモロコシ、ジャガイモ、砂糖などの量に関するデータをほぼリアルタイムに収集するとともに、特定の自治体、州、地域などの集計条件を指定することもできます。このデータは、より緻密な需要予測を必要としている種子関連企業、化学企業、銀行、政府など農業エコシステムに関わる組織に販売されます。John Deereの最終的な目標は、収益の半分を第三者へのデータ販売から得ることです。

 John Deereのビジネスモデルは革新的ですが、自社製の農機から収集されるデータは自社のものであるという立場を取れるからであって、日本でこのような方法をとると、データのプライバシーや所有権の論争が起こり、問題になる可能性があります。

 そこで、異なるアプローチを取るFarmobileの例をみてみましょう。同じく米国企業で、接続型デバイスを使用して農機のデータを収集しますが、同社はデータを自社で囲い込むのではなく、農家自身がデータを販売し、収益を受け取れるプラットフォームを用意しているのです。同社によれば、ある農家は、2016年に200万円を超える額で第三者に農業データを販売できたとのことです。日本市場にはこういったビジネスモデルのほうが適している可能性があります。あるいは、John Deereのビジネスモデルを採用するならば、例えば参加する農家に報奨金を提供するなどの改善が必要となるでしょう。