[北京 17日 ロイター] - 中国では汚職対策から外交まで実に多くの分野で、習近平国家主席の支配力の強大さが顕著になっている。しかしそれに伴って、習氏が市場改革を推進すると期待してきた投資家や企業経営者は、落胆する事態が訪れるのを覚悟し始めた。

2期目に入ろうとする習氏は、経済政策で国家主導を前面に押し出すとともに社会の安定を重視しており、市場の自由化などもはや二の次とみなす傾向が強まる一方なのだ。

18日からの共産党大会を前に、同党の報道官は記者団に対して中国が市場の開放とアクセス拡大を追い求め続けると強調した。しかし外資系企業幹部やアナリストは、こうしたコメントにどれほど実質的な意味があるのか首をかしげている。中国駐在のある米企業幹部は「市場開放など見込めない。規律と管理の話ばかりだ」と述べた。

中国政府のあるアドバイザーは「われわれは改革を急がない。改革ペースは劇的には上がらないだろう」と語った。

<はかなく消えた期待>

中国分析専門家の間では当初、習氏が全面的な汚職追放を掲げ、自ら経済政策策定の責任者になったことは、強固な官僚組織の岩盤を打ち破って改革を進めようという姿勢の表れだと評価されていた。

2013年には習氏の下で共産党が経済において市場に決定的な役割を与えると約束したことも、改革期待を高める要因だった。

ところが今や、多くの専門家や企業経営者は、習氏の市場に対する信頼など本当は極めて希薄で、13年の改革表明は単に前指導部の方針を引き継いだだけだったとみている。

その後に国務院は繰り返し、世界に市場を開くと唱えてきたが具体的な措置は実施されず、外資系企業は在中国欧州連合(EU)商工会議所が名付けたような「約束疲れ」の状態に置かれている。同時に国家安全保障やサイバーセキュリティーに関する新たな規制も導入され、中国の貿易相手は不満を言うと不利に扱われる。

米コンファレンスボードの中国経済ビジネスセンターで共産党を研究しているジュード・ブランシェット氏は「過去20年から30年は、中国は経済発展のためにすべてを犠牲にしてきた。現在は別のパラダイムが出現していると考えられ、国家安全保障が主役であり、経済問題はその視点を通じて処理されている」と指摘した。

ブランシェット氏によると、真の市場改革を実行すれば、習氏がこれまでの闘争でせっかく勝ち取った権力の大半を2期目に手放すことになり、改革の実現はあり得ないという。

<安定優先>

中国にとって必要だが痛みを伴うと多くのエコノミストが主張するその他の改革も、習氏の下では遅々として進んでいない。それは公的部門の債務圧縮に向けた抜本的な対応や、地方政府の債務問題に取り組むための財政整備、住宅バブルを抑制する不動産新税導入、農家の土地売却の自由度拡大などだ。

中国企業の海外買収に制約を加えることを含めた資本規制は、人民元の安定に寄与した半面、人民元国際化の野望にはマイナスとなっている。

改革推進派からは、中国政府は経済や社会の安定が損なわれるのを恐れ、また国有企業など強力な既得権益者の抵抗に直面して、経済構造をがらりと一変させるような改革を避けてきたとの声が聞かれる。しかし中国ニューサプライサイド経済学研究所ディレクターのジア・カン氏は「そうした改革をしないと、さまざまな摩擦の蓄積が続いて、リスクがさらに高まり、経済社会が進展していく希望が砕かれかねない」と警鐘を鳴らす。

習氏は、しっかりした経済成長が続いていると胸を張れるかもしれない。今年の経済成長率目標の6.5%前後とされているものの、実際は7%近くになりそうだからだ。それでも成長は、より持続可能な消費ではなく、借り入れと投資に依存する構図は変わっていない。

さらに国家の経済に対する支配を拡大することが、習氏の2期目の主な政策課題になっている。このため政府がいくつかの規制セクターを外国に開放すると宣言しているにもかかわらず、一部の外資系企業団体は眉唾だろうと疑いの態度を隠さない。米中ビジネス協議会幹部のジェイコブ・パーカー氏は「外銀の出資規制が49%から50%かそれ以上になるまで、あるいは外資系保険が完全に市場にアクセスできるまでは、5年前と同じ会話しかできない」と述べた。

<国有企業統合>

習氏はまた、国有企業が経済の勘所を押さえるべきだと再び主張するようになった。

中国市場に詳しい外国の専門家は、政府が国有企業を統合して一層巨大な規模にする取り組みを推進している点が、改革が必ずしも市場機能の利用を意味していないことを証明していると説明する。近年では国有企業は共産党委員会を社内の意思決定に関与させることが義務付けられ、15年に出された国有企業改革草案には、13年に表明された市場機能に決定的な役割を与えるという言及は見当たらない。

北京駐在のある西側ベテラン外交官はロイターに、習氏にとっての最優先事項は引き続き共産党の優越性と経済社会の安定をより高めることにある、と語った。

(Michael Martina、Kevin Yao記者)