ビジネスパーソンが成長し続けるための鍵を握る「仕事上の経験」。その経験からいかに学ぶかについて考えるのが本シリーズの目的である。2回目の今回は、「経験から学ぶ力」とはどのようなものなのか、その全体像について説明したい。(シリーズ第1回はこちら)

経験から学ぶ力とは

 同じ経験をしても、そこから学ぶ人と学ばないひとがいる。なぜこのような違いが生じるのだろうか。それは、「経験から学ぶ力」の違いである。私は、過去の研究を踏まえ、さまざまな領域のプロフェッショナルを調べて、経験から学ぶ力とは何かについて検討してきた。その結果を一言でいうと、次のように表現できる。

 適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる。

「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をし<br />そして「思い」と「つながり」を大切にする<br />経験から学ぶための5つの要因とは<br />神戸大学大学院経営学研究科教授 松尾 睦

 つまり、挑戦的な課題に取り組み、自分の仕事を振り返りながら、その中にやりがいや意義を見つけるとき人は成長する。そして、その土台となるのは、仕事 に対する「思いやこだわり」であり、他者との「つながり」である。

 右図は「経験から学ぶ力」のモデルであるが、「挑戦する力、振り返る力、楽しむ力」という3要素を「ストレッチ、リフレクション、エンジョイメント」という言葉で表している。中心にある「思いとつながり」は、これら3要素を高める土台となるものである。