成功する経営者の利益の出し方は「コスト削減」でなく「ブランド創り」

間違ったコスト削減とは?

 前回は、経営者としてはQPS(Quality、Price、Service)に加えて「C」、コスト(cost)の要素を考えておく必要があり、業務を製品や商品の製造や調達、営業活動のようなお客さまの満足に直接関わる業務である「付加価値活動」と、経理や総務の事務的な仕事や、営業であっても社内での書類作成のようなお客さまの満足に直接関わらない「非付加価値活動」に分けて、コスト削減の方策を考えなければならないという話をしました。

 特に付加価値活動に対するコスト削減は、お客さまに対する価値を損なわずにコストを下げることを考える「VE(バリュー・エンジリアニング)」の視点で行わなければなりません。

成功する経営者の利益の出し方は「コスト削減」でなく「ブランド創り」小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 それを誤ると、前回取り上げた破綻直前の日本航空のように、ビジネスクラスの乗客向けサービスまで削減して顧客の評判を落とす事態に陥ります。

 もうひとつ、私が気づいた例を挙げると、JR東日本の自動改札機の残高表示の「改悪」があります。JR東日本の自動改札機のディスプレーは手前側と奥側の2ヵ所あるのですが、手前しか表示されなくなりました。

 歩いて通過する乗客には、とても見にくくなりました。自社の社員も多くが自動改札機を通っていると思いますが、何も感じないのでしょうか。他のJR各社や都内の私鉄は、前後とも両方のディスプレーに残額などが表示されています。

 JR東日本には自社なりの理由があり、コスト削減のための「改善」であると考えているかもしれませんが、乗客の立場では残高が見にくくなったことは明らかです。

 そこにはVEの視点が欠けています。わずかなコスト削減で乗客の満足度は落ちているはずですが、実質的に競合がない企業なので、そんなことは気にしていないのでしょうか。