ではどうするか。小国の農業を見習うことである。2009年の農業輸出額を見ると(FAOのHPによる)、トップはアメリカの621億ドルであるが、ネーデルランド(オランダ)が461億ドルで2位となっている。小国ではデンマークも130億ドルで14位につけている。これに対して日本はわずか10億ドルで60位でしかない。これは、わが国の農業が国際競争力に欠ける何よりの証左ではないか。また、輸出額から輸入額を差し引いたネットの金額でみると、ブラジルが332億ドルで1位、2位はネーデルランドの177億ドルであり、66億ドルのデンマークが10位に浮上する。日本は、最下位のマイナス347億ドルであり、ブービーメーカーが中国のマイナス289億ドルとなっている。

 ネーデルランドは国土が小さいので穀物自給率は16%(2007年)とOECD諸国の中では最低に位置するが(わが国は28%)、輸出額の内訳をみると、高価なタバコや半加工食品、チーズや牛肉、鶏肉などが上位を占めている。これに対して、輸出額トップのアメリカは大豆、トウモロコシ、小麦のいずれも穀類がトップ3を占めている。

 わが国の農業がどちらを目指すかは明らかではないか。農地の少ないわが国が穀類に頼っていては、未来がないことは自明であると思う。わが国が見習うべきは、ネーデルランドやデンマーク型の付加価値の高い農業構造への転換であろう。畜産はもとより野菜や花卉、果物などが、大きな可能性を持つと考える。高級食材を求める発展著しい大きな市場もすぐ近くにあるではないか(中国等)。

 食料安保についてはむしろ、コメそのものではなく、水田や耕地面積を維持・確保する施策を重視すべきである。

 このように考えると、わが国のカロリーベースの食料自給率を政策目標に掲げるやり方には、そろそろ終止符を打つべきではないか。農業を本当に強くするためには、たとえば農林水産物の輸出額(現在4920億円、目標1兆円水準)等を目標に据える方が、はるかに理にかなっているように思われる。

(文中意見に係わる部分はすべて筆者の個人的見解である。)