米オハイオ州の“配管工ジョー”は、2008年の大統領選でオバマが掲げた富裕層への増税案に反対したことで有名になった。彼は勤務先の会社を買収するつもりだったため、富裕層への増税は困ると主張した。しかし、彼は当時、無免許の配管工であり、勤務先は社員2人という超零細企業だった。誰が見ても、その増税案で彼が不利益を被ることはなさそうだったが、彼は自分が将来ミリオネアになると強固に信じていた(『ポジティブ病の国、アメリカ』B・エーレンライク著)。

 そういった強烈なポジティブシンキングが、経済格差の激しい米国をこれまで支えてきた。だが、景気低迷の長期化に伴ってアメリカンドリームは揺らぎ、ウォール街の高額報酬に対する抗議活動が激しくなっている。

 R・B・ライシュは、近著『余震』で、戦前のFRB議長、M・エクルズの洞察力を称賛している。彼は、大恐慌の原因は富の偏在が激しかったことにあったと述べていた。ひと握りの富裕層の元に膨大な所得が蓄積され、他の階層の購買力は彼らに吸収された。それは大衆消費社会の存続を不可能にしたという。現在の問題にも通じる視点である。

 中国のマスメディアは、連日のようにウォール街のデモの様子を報じている。この問題に対する中国の人びとの関心は高い。所得・資産の格差が激しいという点では、中国は米国と似ているからである。