事実に基づいて
課題の真因を追究する

小松創一郎
三菱UFJリサーチ&
コンサルティング
経営コンサルティング部
(大阪)
チーフコンサルタント

 スギノマシンの場合、30 代から40 代の若手中堅幹部らを中心に部門横断的に十数人のメンバーを集め、三つのチームを作った。2週間に1度、全国から本社にメンバーが集い、全社的な経営課題に取り組む。各チームが小松のサポートの下、自ら課題の真因を追究して抜本的な解決策を導き出す。

 最終的なアウトプットは経営トップへの提言である。

 「ジュニアボードの良い点は、課題が模擬的なものではなく、本物の経営課題であることです。提案内容が認められれば実際の経営に反映されるため、モチベーションも緊張感も高まります」と杉野常務執行役員。

 検討する上で重視するのは、「事実を押さえる」「真の原因を突き止める」「合理的な立論を行う」「分かりやすく示す」ことと小松は言う。「メンバーへの経営情報の開示」と「検討途中でのプロジェクト外からの横やり防止」も重要だ。

 スタート当初は戸惑いもあったが、2カ月後に突然メンバーのスイッチが入った。事実の把握と分析から解決策のアイデアを導き出す面白さと、経営に参画する意識が浸透し、メンバーのやる気に火が付いたのだ。

 3年にわたり3回行われたジュニアボードの第1回目の課題は“海外戦略の見直し”だった。だが、チームが課題の真因を探った結果、導いた答えは“全社的な組織改編”であった。国内外の垣根を取り払い、顧客ベースで事業部を集約した方が海外戦略を立てやすいからだ。この提案は経営会議で承認され、後続プロジェクトを経て、6事業部から2事業本部体制にする大改革が行われた。「最も大胆な提案が通ったことに、私自身が驚きました」と杉野常務執行役員は回想する。まさにジュニアボードの提案が会社を動かしたのだ。

 次の第2回、第3回の提案も経営に採用された。結果として、ジュニアボードの成果は、メンバーの成長はもちろん、経営陣の意識改革にまで及んだ。