化粧をする習慣さえなかった女性たちが、世界一流の化粧品に関心を持ち、究極の美を追求する――。そんな現象が経済発展著しい中国で起きている。そうした中国人女性の美容ニーズが高まるなか、急成長&競争激化する化粧品市場に挑む日本企業の1つが、ポーラ・オルビスホールディングス傘下のオルビスだ。同社は09年に北京第1号店を皮切りに中国へ進出し、現在は百貨店を中心に15店舗を展開。そして今年7月からは、ネット通信販売にも乗り出した。日本では通販を中心に比較的手ごろな価格で高品質の化粧品を販売する戦略で成長してきた同社は、競争の激しい中国でどのように女性たちの心を掴んでいるのか。同社常務取締役でもある、北京オルビス・下黒沢隆董事長にリアル店舗とネット通販を組み合わせた独自戦略について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

通販で急拡大したオルビスが
中国ではリアル店舗から進出を始めた理由

――08年9月に現地法人を設立し、09年6月に第一号店(北京来福士店)を皮切りに店舗展開を広げていらっしゃる御社ですが、中国進出のきっかけを教えてください。 

世界で最も急成長&競争の激しい中国化粧品市場<br />ネット人口増で広がる「オルビス流ネット通販」の商機<br />――北京オルビス・下黒沢隆董事長に聞く北京オルビス・下黒沢隆董事長

 中国進出を具体的に意識し始めたのは2005年に香港へ進出した頃からです。06年には台湾で通販事業を開始し、さらにその意識が強まったものの、我々は中国進出後発組なので十分にノウハウを蓄積した後でなければ進出はできないという葛藤がありました。そうしたなかでついに3年前、台湾でビジネスモデルが確立し、黒字化の目処が立ったため、中国本土での事業スタートを決断しました。

――もともと日本では通信販売により急拡大したオルビスが、中国においては通販ではなく、店舗から販売を開始したのはなぜですか。

 進出当時における弊社の最も大きな問題は、中国でオルビスブランドが認知されていなかったことです。当時は、中国全土で通販を展開するには、インフラ等に不安や課題があったこともあり、ブランドとしての認知度を上げるためにもまずは北京と上海に店舗をつくり、ある程度の認知を得た時点で通販を開始する戦略を採ることにしました。

 また、ここ数年、中国最大のECモールであるタオバオの利用者が増えて随分変わりましたが、以前の通販商品はいかがわしいことが多く、信頼性が低い状況でした。その点においても、ブランド力や信頼性を築くために店舗が必要だったといえますね。