本コラムが公開される11月初旬は、クリスマス向けのイルミネーションが点灯されるようになる。東京でいえば、六本木ヒルズ界隈が名所だろう。ただし、節電のために例年通りの華やかさになるかどうかは不明だ。

 夏の梅雨明け宣言とともに飲料業界が盛り上がるように、立冬(11月8日)を過ぎれば小売業界も一斉にクリスマス商戦に突入する。その代表として今回は、家電量販店大手である、エディオン、ケーズホールディングス(HD)、ヤマダ電機(証券コード順)を扱う。ジングルベルほどの響きはないが、ちょっとした警鐘を鳴らしてみよう。

 今回、家電量販店業界を取り上げる気になったのは、2011年10月初めに公表された「日銀短観」がキッカケだ。11年9月の調査によれば、企業の景況観を示す「業況判断DI」が、大企業非製造業でプラス1となり、前回調査(11年6月)よりも6ポイント改善したという。

 ただし、先行き3ヵ月(11年10月~12月)を予想する業況判断DIは横ばいにとどまった。企業の多くが年末にかけて慎重な見方をしているのは、長引く円高や、米欧景気の減速懸念にあるらしい。

 日銀短観は毎回、調査対象企業数が1万社を超え、直近の景気を正確に反映するマクロ経済統計として重要視されている。ただし、筆者はマクロ経済というものが、どうにも苦手だ。分析結果に、つかみどころがないからだ。

 例えば自動車業界。今回の日銀短観によれば、業況判断DIの先行きは11ポイント改善するとしている。では、国内雇用はそれに見合った回復を見せるのだろうか。第63回コラム(自動車業界編)で具体的なデータを使って説明したように、トヨタについては国内雇用増が期待できるかもしれないが、ニッサンとホンダにはあまり期待できない。

 例えば精密機器業界。マクロ経済統計に基づいて、政府・日銀が円高問題の解決に乗り出したとしよう。第66回コラム(産業空洞化編)の〔図表13〕で証明したように、日本電産・村田製作所・京セラにとって円安(←円高ではない)は業績悪化要因になるので、政府・日銀による円高対策は迷惑な話になる。

 マクロ経済統計が指し示す方向性は一つかもしれないが、ミクロ経済は十人十色であり、そこへ一律のマクロ経済政策を実行しようとしてもほとんど実効性はない、と考えたほうがいいようだ。

企業ごとの分析でも、
多少の工夫でマクロ経済がわかる

 そこで本題の家電量販店業界である。経営分析というのは通常、その企業に対する過去の業績を評価し、将来の成長性を占うものとして利用される。ところが、分析道具に多少の工夫を加えると、マクロ経済統計に劣らぬ分析結果や、経済政策の効果のほどを垣間見ることもできるのだ。

「決算書の読みかた」にとどまっているようでは、第62回コラム(スーパーゼネコン編)の言を引用するならば「小せぇ、小せぇ」。また、第69回コラム(任天堂編)では「容易に扱える分析手法というのは、経営判断を遅らせるだけだ」と述べた。さらに輪をかけるならば、「誤った経営分析や管理会計の手法」を用いると、「誤った経営判断」を下すもとになる。