(2) Reverse the process, from “Channel Up” to “Idea Down”.
   チャネルアップからアイデアダウンへとプロセスを逆転させよ

  次いでコキッチ氏は、広告会社やメディアエージェンシーなどがチャネルにフォーカスし過ぎてしまう現状を危惧した上で、ビッグアイデアを達成することを目的としたチャネル活用を志すべきだと語り、発想の転換をうながした。その事例としてNIKE「WRITE THE FUTURE」を紹介。

「WRITE THE FUTURE」は2010年のワールドカップでNIKEが行ったキャンペーンだが、同ワールドカップのスポンサーはadidas。NIKEはライバルと異なるアプローチとして、子どもたちが「サッカーが楽しい、もっと上手になりたい」と思っていることに着目し、彼らに自分たちの将来を描いてもらおうと考えた。そこで、子どもたちにサッカーをプレーしているビデオをYouTubeに投稿してもらい、そこから投票で未来のスター選手を選出。こうした取り組みの結果、Facebookページのファンは2000万人、インプレッション数は20億に到達したという。ワールドカップ期間中には、サッカーファンのための最新情報が集まるコミュニティとして活用された。

(3) Master the art of collaborative creativity.
   協調型のクリエイティビティを会得せよ

「戦略担当からクリエイティブへ、さらにメディア、テクノロジー、ソーシャルへと直線的なフローで進めるオペレーションは機能しない」(コキッチ氏)。

  先に挙げた「EpicMIX」は、各セクションの担当者や広告代理店の担当者がコラボレーションしながら進められており、だれのアイデアだったか? ということは重視されていないようだ。

  また「WRITE THE FUTURE」ではNIKEをはじめ、Wieden + Kennedy、MINDSHARE、Razorfish、AKQAといったエージェンシーが集まり、ブレインストーミングを重ねることでアイデアをまとめ上げた後、それぞれの役割が決められていったという。

「WRITE THE FUTURE」のような試みは「なかなか実現しづらいものだ」とコキッチ氏は言う。だが、アイデアや予算の取り合いをするのではなく、協調する形でクリエイティビティを高める取り組みは、クライアントにとっても広告代理店にとっても新たな可能性となり得るだろう。

後編に続く



(構成・文・写真/gingalighter)