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iPhone X シルバー 256GBモデル。iPhone 8のシルバーモデルとは、背面の色味が若干異なる。また前面は黒い配色となっている

 AppleはiPhone Xを11月3日に発売します。9月12日にiPhone 8シリーズと同時に発表されましたが、9月22日に発売されたiPhone 8シリーズから遅れること1ヵ月半近く、満を持して発売されるのが、iPhoneの将来を示すスマートフォン、というわけです。

 今回は連載の通常回ですが、事前にAppleより借り受けたiPhone X シルバー256GBモデルを1週間使った感想を、特に「ボタン」にフォーカスしてお届けしたいと思います。若干細かすぎるこだわりなのかもしれませんが。

iPhone Xの第一印象、個人的に最重要なサイズの話

 10月27日から予約が開始されたiPhone Xですが、Facebookの友人は意外と発売日に手に入れられる人が多かった様子。新たに採用されるディスプレイや、赤外線を追加したTureDepthカメラシステムなど、新たにiPhoneに採用されるパーツも多く、製造数が厳しいと見られていましたが、感覚としてはiPhone 7 Plusのジェットブラックよりも予約状況は良かったのではないかと思いました。

 iPhone Xの位置づけを一言で言えば、iPhone 8の派生モデルです。

 iPhone 8 Plusの派生モデルではない点は意外に思われるかもしれませんが、大画面モデルで採用されるランドスケープモード時のメニューとコンテンツの同時表示などは、iPhone Xでは利用できず、iOS 11での扱いとしては「標準ディスプレイサイズ」と判断されているようです。実際にサイズはiPhone 8に近いので、その位置づけも納得ではあります。

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iPhone 8にシリコンケースを装着し、ケースなしのiPhone Xに重ねると、幅や厚みはほぼ一致する。iPhone Xのほうが若干長い

 筆者は手が小さい、という話を本連載でも書いてきました。そのため、5.5インチモデルは、デュアルカメラの魅力もありながら、片手で軽快に使えないという理由から敬遠してきた経緯があります。

 そんな筆者でも、iPhone Xなら握れる、片手で使える。ちょうどiPhone 8に純正ケースを装着したようなサイズ感、と言うとわかりやすいかもしれません。もっとも、落としたことを考えるとiPhone Xにもケースを使うことになりますが。

 iPhone 8の不満な点は、当たり前ですが、iPhone 8 Plusよりも小さな画面サイズ。デバイスの前面のほとんどをディスプレイが覆う現在のスマートフォンのデザインにおいて、小さなデバイスに小さなディスプレイしか搭載できないのは当たり前です。

 しかし、iPhone Xには大きな5.8インチのディスプレイが、iPhone 8のケース付きと同じようなサイズの中に収められています。有機ELディスプレイを折り曲げて搭載することで、縁までいっぱいにディスプレイを敷き詰めることに成功したのです。

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左から、iPhone 8 PlusとiPhone Xを最大輝度で表示させたところ。iPhone 8の黒い壁紙部分は、iPhone Xと比べ、白っぽくバックライトの光が見える。ちなみにこの環境でもFace IDの認証はきちんと行なわれた

 最近、スマートフォンで映像を見るチャンスも多いと思います。そのためには大画面が欲しい。しかし端末サイズはコンパクトに保ちたい。そんなニーズを叶えてくれるのが、iPhone Xの新しいデザインです。

 発色も良いし、黒もちゃんと黒く塗りつぶされる。正確には消灯しているから真っ黒になるわけですが。ボディサイズをできるだけ大きくせず、最大限にディスプレイを搭載するデザインを採用したiPhone X。

 そのデザインで最もチャレンジが大きかったのが、あのボタンの処遇でした。

ホームボタンに与えられていた役割

 iPhoneは登場以来、ホームボタンをディスプレイ下の中央部分に備えてきました。当初はボタン自体はプラスティックで、押し込めるタイプのものでした。

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ホームボタンがなくなり、画面下部のジェスチャーとサイドボタンにその機能が振り分けられた

 iPhone 5sで指紋認証Touch IDのセンサーを兼ねるようになり、材質はサファイヤガラスに変更されました。ホームボタンに指を触れると、ロック解除やApple Payの支払いなどの認証が行なわれます。指は5本まで登録できました。

 iPhone 7になると、ホームボタンは物理的には押し込めない、感圧とフィードバックを組み合わせたものになりました。電源が入っているときはこれまでのようなボタンのように扱えますが、電源が入っていなければ上下に動かない単なるガラスの領域になります。“石化”とでも言うべきでしょうか。

 iPhone 7で押し込めなくなって、このボタンはなくなるんじゃないかと筆者は予測しましたが、iPhone 7の翌年に早速ホームボタンがないiPhone Xが登場するほど、変化が早いとは思いませんでした。

 ホームボタンには、iPhoneの操作の基本となるホーム画面を表示させる、画面を点灯させるといった機能のほかに、ダブルクリックでアプリ切り替え画面の表示、トリプルクリックでアクセシビリティのズーム機能の呼び出しが割り当てられていました。

 ズーム機能に「低照度」フィルタを選択肢、夜まぶしすぎるディスプレイの明るさを抑える裏技を使っている人も多いのではないでしょうか。

 でも、機能はまだまだあります。

 iPhone 4S以降、音声アシスタントSiriが搭載され、これを呼び出すためにホームボタンを長押しする動作が追加されました。こちらも、iPhone 8まで共通して利用できる操作です。

 ロック画面で2度押しすると、Apple Payの画面が現れ、店頭で支払う際には前述のTouch IDで指紋認証をします。Apple Payではホームボタンが大活躍していたのですね。

 さらに、iPhone 6シリーズ以降の大画面化で、画面上部に届きにくくなってしまったことから追加されたアクセシビリティの機能「簡易アクセス」は、ホームボタンを押し込まずに2度タップすると、画面全体がぐぐっと下に引き寄せられる仕組みでした。

 そして意外と便利に毎日活用しているのがスクリーンキャプチャ。ホームボタンとサイドボタンの同時押しを、メモ代わりに活用している人も少なくないのではないでしょうか。

 ここまで書いてくると、ホームボタンが、世界で最も多機能で、最も押されているボタンであるということに、大きな疑問を持たないのではないでしょうか。

ホームボタンが無くなった問題
iPhone Xでの解決策その1:フリック

 iPhoneそのものの操作性に関わるホームボタン。これを有機ELの全面ディスプレイのために廃止する。AppleにとってのiPhone Xにおける最大のチャレンジといっても過言ではありません。なにしろ、10年間変わらないインターフェイスとして採用し続けており、2017年モデルのiPhone 8シリーズにも搭載されているのですから。

 その解決策は、フリックによるジェスチャーでした。

 ホームボタンを押し込む動作を、いくつかのフリック操作のジェスチャーに振り分けたのです。

 まず、ホーム画面を開く、ホーム画面に戻るといったホームボタンを1度押しこむ動作は、画面下の縁から上へのフリックというジェスチャーが割り当てられました。同じ動作でホーム画面の2ページ目以降から、1ページ目に戻ることもできます。

 iPhone Xを使い始めた当初は、無意識にホームボタンが配置されていた付近を押し込んでいた自分がいましたが、この動作だけでは画面が点灯するだけです。そう、画面のどこをタップしても、点灯させられるというジェスチャーも追加されているのです。

 次に覚えるべきは、アプリ切り替え画面の表示。これに慣れるまで、若干時間がかかります。操作はホームボタンの代替の、下から上へのフリックを途中で止めて、感触フィードバックを得るという手順です。

 当然1秒以内に終わりますが、フィードバックを待たずに動かしてしまうと、通常の下から上のフリックと認識され、ホーム画面に戻ってしまいます。

 さらに、これまでアプリ切り替え画面はアプリを下から上にフリックすれば強制終了できましたが、iPhone Xでは下から上のフリックはホーム画面に帰る、に割り当てられているのでアプリ終了できず、ホーム画面に戻ってしまいます。

 アプリを長押ししてから終了ボタンを押すか、下から上のフリックをしなければならず、これは1週間たっても、いまだに慣れない操作です。

 これが面倒という人は、画面下縁を左から右にフリックすると、アプリをペラペラとめくることができ、これでもアプリ切り替えが可能です。2つのアプリを頻繁に切り替えるときには、この方法が便利だと思いました。

ホームボタンが無くなった問題
iPhone Xでの解決策その2:サイドボタン、大型仕様

 ホームボタンとアプリの操作に関わる機能がフリックに割り当てられていましたが、それ以外の機能の振り分け先は、デバイス右側面にあるサイドボタンです。このサイドボタン、iPhone 8シリーズのものよりも2倍のサイズに巨大化しています。

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役割が増えたことから大型化したサイドボタン。長押しでSiri、二度押しでApple Payなどの機能が、ホームボタンから引き継がれました

 ホームボタンが担っていたダブルクリックを含むボタン操作の頻度が大幅に高まることから、おそらく、強度を高めるために大きくしたと考えられます。

 サイドボタンはこれまでどおりに、画面を点灯させたり電源を入れたりする役割を担いますが、電源をオフにするには、サイドボタンとボリューム下ボタンの同時押しになりました。

 さて、サイドボタンの長押しには、Siriの呼び出しが割り当てられました。もちろん「Hey Siri」と声でSiriを呼び出すこともでき、こちらに慣れている人はおそらく使わなくても済みそうです。

 またロック画面でのサイドボタンのダブルクリックでApple Payの呼び出し、サイドボタンとボリューム上ボタンの同時押しでスクリーンキャプチャ、サイドボタンの3度押しでアクセシビリティのズーム機能の呼び出し、がそれぞれ割り当てられています。

 画面をタップすれば点灯するようになったので、サイドボタンの1度押しはさほど使われなくなりそうですが、繰り返し押す操作が増えたことから、強度の確保は必須だったのではないでしょうか。

ホームボタンが無くなった問題
iPhone Xでの解決策その3:Face ID

 最後に、Touch IDです。

 これまでのiPhoneのホームボタンにはTouch IDのための指紋センサーが内蔵されています。360度の指紋読み取りに対応するため、端末が縦でも横でも、逆さでも認証を取ることができました。

 また第2世代センサーになって、その認識速度が飛躍的に向上し、iOSの進化によって、ホームボタンを押し込みながらTouch IDで指紋認証を済ませるという操作をまとめることができ、ポケットから取り出しながらホーム画面を開くというテクニックを毎日活用してきました。

 そのホームボタンがなくなり、紆余曲折もありましたが、結局指紋に頼らない新しい生体認証、Face IDが採用されました。

 Face IDは1つのiPhone Xに1つの顔を登録すると、アクセサリや眼鏡、メイク、帽子などにかかわらず、また暗い場所でも、瞬時に顔を照合し、ロック解除やApple Payの支払い認証をしてくれる仕組みです。片方の頬を手で覆っても認証できました。

 登録作業も、指で何度もタップしなければならなかったTouch IDよりも素早く、首をぐるりとiPhone Xの前で回すだけです。このFace IDを実現するために、赤外線カメラとドットプロジェクターを前面に配置したTrueDepthカメラが採用されて有機ELディスプレイにせり出し、「センサーハウジング」や「ノッチ」と言われる部分が構成されています。

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iPhone Xには、各部の説明と簡単な操作方法が記載されたガイドも同梱されています

iPhone熟練のガンマン風操作には及ばない

 Face IDを利用するには、当然ながらiPhoneの内側のカメラがとらえる範囲に顔が収まっていなければなりません。そして認証を採るには、iPhoneを見ていなければなりません(設定で虹彩認証はオフにできます)。

 そのため、iPhoneをポケットの中でロック解除しながら取り出す、という早撃ちガンマン風の動作は不可能になりましたし、たとえば運転中にiPhoneのロックを端末を見ないで解除することはできなくなりました。後者については、iOS 11の運転中モードと合わせて、運転中のiPhone操作をしにくくしていると思います。

 Face IDの認証は十分に素早く、Touch IDと同等のスピードがあります。ただ、Touch IDの場合、ホームボタンを押し込む動作とTouch IDの認証を同時にこなせましたが、iPhone Xでは画面下縁から上へのフリックとFace IDの認証は同時に行われず、ワンテンポの遅れがどうしても生じてしまいます。

 たとえば、ポケットから取り出しながら、画面を一度タップし、画面下縁からのフリックを行いつつiPhoneを構えれば、Face IDによる待ち受け状態でiPhoneを構えることができ、最も素早くiPhone Xのホーム画面を表示させることができるでしょう。

 やはり今までのiPhoneのホームボタンとTouch IDの組み合わせの成熟度合いが高く、iPhone XのフリックとFace IDの熟成や細かいタイミング調整が必要である部分と言えるでしょう。

 実際、ポケットからホーム画面を表示させるために、そこまでの速度にこだわるべきかはわかりませんし、iPhone Xの操作に新たな熟練の技が編み出される可能性も高いと思いますが。