Paul Lienert Jane Lanhee Lee

[デトロイト/サンフランシスコ 27日 ロイター] - シリコンバレーで最も注目されている企業の1つである米電気自動車大手テスラ <TSLA.O>に勤めていたLei Xu氏とJustin Song氏は、自動運転車への関心や投資の高まりを受けて、「次の大きなもの」を追求するため退職を決めた。

2人が立ち上げた会社ヌルマックス(Nullmax)は、未来の自動運転自動車のソフトウェアや機器に使われる部品やシステムの開発に取り組む新興企業の1つだ。ロイターの分析では、そういった新興企業は、シリコンバレーだけで75社、世界全体で240社以上ある。

Xu氏とSong氏は、起業にあたり企業から出資を得たが、多くの新興企業とは異なり、シリコンバレーのベンチャーキャピタル支援は仰がなかった。2016年10月に設立されたヌルマックスは中国の天津シンマオ・サイエンス・アンド・テクノロジー<000836.SZ>から1000万ドルの出資を受けた。

中国企業の後ろ盾を求めることにより、2人はこの分野の新興企業が直面しがちな問題を回避することができた。それは自動運転技術の開発に対して、大手自動車会社や技術系企業が巨額の資金を投じている一方で、シリコンバレーの投資家は今のところ、この分野の投資拡大にあまり積極的ではない、という問題だ。

この分野でニュースになるのは、おなじみの大手企業ばかりだ。ゼネラル・モーターズ(GM)<GM.N>は昨年、サンフランシスコの小さなソフトウェア開発会社クルーズ・オートメーション買収に10億ドルを投じたと報じられ、業界を揺るがした。最近も、米自動車部品大手デルファイ・オートモーティブ<DLPH.N>が、ボストンの新興ソフトウェア企業ヌートノミーを4億5000万ドルで買収した。

今や「どのスタートアップ企業も、何十億ドルも(バリュエーションを)得られると考えている」と、シリコンバレーのベンチャー投資家Evangelos Simoudis氏は言う。

だが、注目度と期待の高さにもかかわらず、何の実績もない新興企業への投資額は、比較的小規模で推移している。ロイターが公表データを基に分析したところ、自動運転技術関連の新興企業向け投資額は、企業と個人からの投資を合わせても、50億ドルをかろうじて上回る程度だ。

「アンドレッセン・ホロウィッツ」や「ニュー・エンタープライズ・アソシエーツ」などの際立った例外を除き、シリコンバレーの大規模ベンチャーキャピタルは、この分野での大規模な投資を控えている。

全体として、自動運転開発に携わる新興企業上位30社のうち、起業後の発展段階で出資を確保したのは7社にとどまることが、ロイターの分析でわかった。これは、業界の将来性に慎重な見方をするベンチャーキャピタルがいることを示している。

その理由として、利益を出している新興企業が少ないことを挙げる人もいる。また、大手自動車や部品メーカーも、この分野に大きく投資してはいるが、自動運転自動車の売上や収益性をどう確保するかについて、まだ明確な戦略を示せていない。

自動運転車の第1弾は、2019─2020年にも商業的に流通し始める見通しだが、人間の運転から自動運転への移行には10年以上かかると専門家は指摘しており、1つの懸念材料となっている。

欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)<FCHA.MI>のセルジオ・マルキオーネ最高経営責任者(CEO)は、「自動運転で無駄な努力を追求すれば、多くのバリューを失う結果になりかねない」と警告する。

<企業投資>

米国の自動車とテクノロジー企業は近年、自動運転技術に合計で400億─500億ドルの投資を行っている。その大半が、買収や提携によるものだ。だが、業界最先端と目される自動車運転部門のウェイモを傘下に持つアルファベット<GOOGL.O>をはじめ、数十億ドル規模を投資しているとみられる大企業が、投資の全貌を公表していないため、全体像の把握は困難だ。

この技術に投資している大手企業には、韓国財閥サムスン・グループ[SAGR.UL]や米半導体大手インテル<INTC.O>、半導体大手クアルコム<QCOM.O>、デルファイや、独自動車部品大手ロバート・ボッシュ[ROBG.UL]などが含まれる。また企業投資家は、自動運転技術の新興企業(ユニコーン企業)5社ないし6社に投資しており、これらは10億ドル以上のバリュエーションが見込まれている。

さらなるユニコーン企業が、今後業界から誕生するかについては議論の余地がある。例えば、過去にクルーズ・オートメーションに投資していた2人の企業投資家は、自動運転技術に対する見方が180度異なっていた。

カリフォルニア州パロアルトを拠点とする投資会社ホーン・キャピタルのベロニカ・ウー氏は、自動運転技術の進展には時間を要することを認めた上で、「そこそこ多数の」新興企業に投資していると述べた。

「(自動運転は主流に)なるかどうかではなく、いつなるか、の問題だ。われわれは極めて楽観的だ」と、ウー氏は言う。

対照的に、シグニア・ベンチャー・パートナーズのサニー・ディロン氏は、現段階ではこの業界に魅力を感じる投資先はないと言う。

GMがクルーズ・オートメーション買収に巨額を投じたことで、「業界が浮足立ち、コンピューター・ビジョンやロボティクスを専攻した博士課程の学生がみな、自動運転技術の新興企業を立ち上げようとしているような状態だ」と、ディロン氏は言う。

また、多くの関連大手企業は「すでに大きな投資や買収は済ませている」と、ディロン氏は語る。それにより、投資家のリターンや起業家が得る報酬が将来的に制限される可能性があるという。

サンフランシスコを拠点とするオートテック・ベンチャーのクイン・ガルシア氏は、業界は「混雑」した状態で、バリュエーションも膨張していると認める。2021年までに、自動運転技術業界では「ごく限られた少数の新規上場(IPO)があるかもしれないが、多くの新興企業が失敗するだろう」と、同氏は予測した。

<中国でのヌルマックス>

こうした厳しい予測があっても、ヌルマックス創業者のXu氏とSong氏が思いとどまることはなかった。2人は、差別化を狙っている。

多くの自動運転技術開発の新興企業が欧米の自動車会社への供給を目指しているのに対し、中国生まれで、カメラを使った認識システムや人工知能の専門家である2人は、中国に傾注している。彼らの初となる一部自動化された運転システムを、2020年までに中国自動車メーカーに納める予定だ。

ともに35歳で、米国で教育を受けた2人の起業家はいま、テスラの巨大な工場から遠くないカリフォルニア州フレモントの小さな工房を拠点にしている。Xu氏はテスラに上級エンジニアとして勤務し、Song氏は、サプライチェーンと品質エンジニアリングを専門にしていた。テスラ側は、2人の元の役職について確認しなかった。

ヌルマックスは、主に上海のオフィスで50人程度を雇用しているとXu氏は言う。米国におけるIT関連の人材が集まる宝庫であり、規制緩和で自動運転の試験をしやすくなったカリフォルニア州の拠点は維持するつもりだ。

ヌルマックスのキャッシュアウト計画について質問すると、Xu氏は直接の返答を避けた。「われわれは忙しい。IPOについて考えている時間は今はないよ」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)